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ミステリの祭典

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またたかない星

作家 小泉喜美子
出版日1979年10月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点
(2019/03/19 10:05登録)
 集英社コバルトシリーズという珍しいレーベルで刊行された、小泉喜美子さんの第四短編集。表題作こそジュブナイルですが、他の作品は大方が1972年~1977年までの5年間に、小説現代・小説推理・サンデー毎日などの一般誌に掲載されたもの。全7篇収録。
 序盤は比較的低調でしたが、一種の通り魔事件を扱ったサイコ系の「髪――(かみ)――」あたりから盛り返した感じ。その次に収録された「殺人者と踊れば」が集中のベスト作品。展開はある程度予想がつきますが完成度が高く、一種の寓話ともいうべきもの。忘れ難い印象を残します。巻末の初出には「マーガレット」とだけありますが、少女漫画誌に挿絵付きで掲載されたものでしょうか。両編とも1976年発表ですので、おそらく作者が充実していた頃ではないかと思います。
 これに次ぐのは潔いほど無自覚に終わる「子供の情景」か、この頃には珍しい形式の「犯人のお気に入り」。「弁護側の証人」の作者だけあって、叙述を軽くひねってツイストを加えたタイプが散見されます。
 総合すると出来は標準程度ですが、文章が心地よく中には光る作品もあり捨てるには惜しいです。とは言え高めの古書価に見合うほどの内容ではないので、コレクターの方以外は第五短編集と併せ増補再刊された、中公文庫版「痛みかたみ妬み」「殺さずにはいられない」での入手をお薦めします。

No.1 6点 こう
(2009/11/03 23:01登録)
 小泉作品は三部作といえる「弁護側の証人」「ダイナマイト円舞曲」「血の季節」以外は全く知らなかったのですがこれも本格ミステリ・フラッシュバックで存在を知った短編集です。
 独創的なトリックがあるわけではありませんが発表年代を考えるとこの作品も「西洋風ミステリ」という表現がぴったりなテイストで洒落た作風だと思います。
 ミステリとは言えないかもしれないですが「子供の情景」が一番気に入りました。短編集は10数冊あるようですので他作品も手にとってみたくなりました。

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