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ミステリの祭典

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禁涙境事件—some tragedies of no-tear land
戦地調停士シリーズ

作家 上遠野浩平
出版日2005年01月
平均点8.50点
書評数2人

No.2 7点 メルカトル
(2022/08/18 22:54登録)
魔導戦争の隙間にあるその非武装地帯には、見せ掛けと偽りの享楽と笑顔の陰でいつも血塗れの陰惨な事件がつきまとう。積み重ねられし数十年の悲劇の果てに訪れた大破局に、大地は裂け、街は震撼し、人々は喪った夢を想う…そしてすべてが終わったはずの廃墟にやってくる仮面の男がもたらす残酷な真実は、過去への鉄槌か、未来への命綱か―。
『BOOK』データベースより。

第五章以外は所々どうでも良い様な描写が散見されます。にも拘らず、肝心の人物造形が数人を除いてなおざりにされている気がします。
体裁としては連作短編の形を取っており、不可解な事件が一応解決されていたり不透明なまま終わったりしていてあまりスッキリしません。それをカヴァーしているのが創元社推理の日常の謎を扱った作品等に於ける、所謂串刺と呼ばれるものです。つまり、各短編が最後に繋がって来て、事件の様相が一変すると云う手法が採られている訳です。

ですから途中であまりパッとしなかった印象の本作が、第五章で人が変わった様に光輝き生き生きと描かれています。本シリーズで最もミステリ色が濃いと評判の本作ですが、ある理由により魔法が無力化された世界で起こる殺人事件という設定に敢えてしたのは、これを本格ミステリへの挑戦を宣言したもの、と捉えても良いのではないかと思います。
たまに日本語が文法的に怪しいのではと思われる箇所があるようですが、まあそれはご愛嬌でしょう。私も人の事は言えませんので。

No.1 10点 T.shimizu
(2009/10/03 04:44登録)
戦地調停士EDシリーズと言った方が分かりやすいのかな
最初に読んだのは
「紫骸城事件—inside the apocalypse castle」で、
次に第一作の「殺竜事件—a case of dragonslayer」。

動機やトリック的なものが一番ミステリっぽいのが
この禁涙境事件だと思います。
「禁涙境」は魔法が使えない場所という設定なので余計に
現実の世界(この小説で「水面(みなも)のむこうがわ」)にいる
私に分かりやすかったのかも。

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