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ミステリの祭典

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喪失の儀礼

作家 松本清張
出版日1972年01月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点
(2009/09/24 21:32登録)
最初から最後まで、警察の地道な捜査を描いた作品。清張の場合、このタイプは社会性より謎解き中心のものが多いように思われます。本作でも病院と製薬会社の問題を多少取り上げたりはしていますが、むしろ犯人の意外性などに比重がかかっています。本作で使われている意外性は書き方ひとつで相当に驚き度が変わってくるものですが、さすが巨匠の文章はうまいものです。現代俳句を取り入れているのも、並の作家にはまねのできない技でしょう。
ただし、謎解き中心にしては説明不足、論理的欠陥がかなりあります。特に犯人の二つの動機について、殺されるべき人間の特定が犯人にどうしてできたのか、全く説明されていないのは問題でしょう。
最終章での推理は憶測の域を出ず、その後の犯人のとる行動も半ページぐらいで説明されるだけで、どうにもすっきりできない幕切れでした。解決部分だけで評価がかなり下がってしまった作品です。

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