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ミステリの祭典

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ハートシェイプト・ボックス

作家 ジョー・ヒル
出版日2007年12月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 Tetchy
(2009/09/16 00:30登録)
絶賛を持って迎えられた短編集『20世紀の幽霊たち』の作者ジョー・ヒルの初の長編は幽霊の復讐譚を扱ったホラーだ。

家族を間接的に失った遺族の復讐が動機と思われた怪異はしかし意外なバック・ストーリーが後半明かされる。
ここに至ってジュードとジョージアの幽霊との闘いという図式で展開する物語はその実、別れた元彼女フロリダことアンナ・マクダーモットの物語でもあることに気付かされる。これは素晴らしい!

読んでいる間、クーンツ作品を読んでいる既視感を感じた。
主人公の心情と信条をくどいまでに細かく叙述する語り口、登場人物が幼少の頃に親から受けた迫害というトラウマ、そして何よりも物語のキーを握る存在が犬という共通性。
だが脅威をもたらす幽霊クラドックはクーンツが生み出す、主人公に絶望的なまでの無力感を感じさせる悪魔のような怪物ほど怖くは無い。
共通するのは異常なまでの執着心と蛇が蛙をいたぶるが如き醜悪さ。
それでも悪役の造型にはやはりクーンツに一日の長がある。まあ、デビュー仕立ての作家をホラーの大御所クーンツと比べる事自体が過大な要求なのだろうけれど。

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