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ミステリの祭典

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13のショック
異色作家短篇集

作家 リチャード・マシスン
出版日1962年01月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 クリスティ再読
(2024/07/15 18:33登録)
マシスンというと、評者は吸血鬼モノの短編「血の末裔」が大好きだったりする。芸風の広い作家ではあるのだが、この短編集を読んだ印象だと、短編だと「達者さ」が目立つタイプだなあ。器用でよくできている、とは思う。しかし、それ以上のこだわりみたいなものは伝わってこなかった。異色短編って器用なだけでは意外にダメなジャンルなのかもしれない。アタマを使って書く以上の、何かプロットから滲み出る作家の体臭みたいなもの、逆説かもしれないがそんなものに惹かれているかなあ、などとも感じながら読んでいた。

いや出来は否定できないものがあるな。「レミング」とか古典的な出来栄えだと思う。一発ネタだけど、過不足なく語り切っている。強いて言えばマシスンらしさって、不条理な悪意みたいなものかもしれないが、児童虐待を描いて陰惨な「顔」とか、隣人間での不和の種を撒く男を描いた「種まく男」とかに、ダーク不条理劇みたいな味わいがあるか。

とはいえ、ケーハクなタッチでロサンジェルスがアメリカを「侵略」する「忍びよる恐怖」とか、馬鹿馬鹿しいといえばそうだけども、意外に今ポリコレとかでこんなネタ書いたらウケるのかしら?

いやいや、ある意味「表面的」であるところに、マシスンの持ち味があるのかもしれない。なんか意外である。

No.1 5点 mini
(2010/05/08 10:03登録)
本日5月8日公開のキャメロン・ディアス主演映画『運命のボタン』
原作は短篇だが、これを表題にした短編集も既に刊行されている
作者はリチャード・マシスン、世の中ちょっとしたマシスンブーム、てなわけでもないか

異色短篇作家リチャード・マシスンは長編もいくつか書いていて、「奇術師の密室」という長編を題名に惹かれて手に取るかも知れない
もちろんマシスンの本領は異色短篇で、この「13のショック」は代表的な短編集だ
S・キングなどのホラー作家はもちろん、ホラー以外の作家たちも含めた後の作家に影響を与えた点では、数ある異色短篇作家の中でも№1だろう
特に得意なのが精神を侵食されたパラノイアな話で、こういう偏執狂的な話を書かせたら右に出る作家はいない
もう一つが視覚イメージに溢れた映像向きな面で、私は観た事が無いがドラマ『トワイライト・ゾーン』の脚本家だったらしい
この辺の経歴はロバート・ブロックに似ていて、実際読んだ感じでは他の異色短篇作家の中で誰に似ているかと問われれば、やはりブロックが一番近い
しかしブロックのような言葉遊び的な底の浅いネタ落ちとは違って、マシスンの方が物語の展開自体で勝負している
文章も平易だし、異色短篇に入門するならどの作家が向いているかと問われたら、一番にマシスンの名前を挙げる
少なくともダールやスタージョンでは文章的にも内容的にも異色短篇入門には向いていない
まぁ直球勝負なエリンや変化球のフィニイあたりから入る手もあるけどね
何か褒めてる割には採点が低いじゃないかと言われそうだが、万人向けで癖の少なさは良いんだけど、私の好みではもう少し好き嫌いが分かれる味の方が好みなので・・・

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