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ミステリの祭典

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江戸川乱歩全短篇<3>怪奇幻想
赤い部屋・人間椅子・芋虫・百面相役者・覆面の舞踏者・一人二役・お勢登場・木馬は廻る・毒草・白昼夢・火星の運河・空気男・悪霊・指・防空壕・押絵と旅する男・目羅博士・双生児・踊る一寸法師・人でなしの恋・鏡地獄・虫

作家 江戸川乱歩
出版日1998年07月
平均点7.00点
書評数3人

No.3 7点 クリスティ再読
(2026/02/24 13:08登録)
さて乱歩の短編は評者は創元の日本探偵小説全集でやってしまったために、幻想系作品がいくつか書評し落としているのが気になっていたのだ。だからいい機会でこのアンソロでしようか。
具体的なお目当ては「赤い部屋」「火星の運河」「踊る一寸法師」「蟲」あたり。谷崎潤一郎の「途上」に影響を受けて書いた「赤い部屋」はプロビバリティの犯罪として乱歩自身が喧伝したこともあって、知名度もたかいよね。でも改めて読むと「殺人という観念」「脳髄の中で完結する殺人」といった趣きがあって、観念浪漫としての面白さが上回るように感じるんだ。
ガチの幻想小説としては「火星の運河」がいいなあ。島尾敏雄の夢小説と似たテイストがある。「白昼夢」と併せて、乱歩って自身が見た夢がミステリの素材になっているのかもしれないよ。もっとこういうの書いたらよかったのに、とも思ってしまう。
「踊る一寸法師」はおそらくポオの「ちんば蛙」の乱歩流翻案。イジメの復讐譚。
「蟲」って旧字で書きたいよ。やはり24文字「蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲」続く迫力は旧字でないと出ないと思う。要するに九相図の話だけど、どうも無駄の多い話のように感じる。「火星の運河」みたいなシンプルな話だとよかったかも?

でお目当て外で良かったのは「木馬は廻る」。どうとないスケッチ風の話だけど、乱歩の筆力の高さが全部納得させる。珍品の「空気男」も脱力感が妙にいいなあ。ちなみに本作(大正15年)では「耽異者」という言葉で「猟奇」を言い表しているところがあり興味深い。「指」はどうということのない小品だけど、発表された最後の作品だと思うと興味深い。戦後モダンの「奇妙な味」にうまく適応している。

というわけで懸案を解消。

No.2 7点 蟷螂の斧
(2019/06/30 10:00登録)
夢野久作氏の「江戸川乱歩氏に対する私の感想」の中で紹介された『白昼夢』~その純な、日本風な、ヤルセのない魅力に、私はスッカリ強直させられてしまいました。『蟲』~あられもない気分の変幻を、あんなに平気で扱い去った筆力の凄まじさには「鬼か人か」と叫びたいくらい、参いらせられてしまいました。~を拝読。
サブタイトルが怪奇幻想とあり、猟奇ものなどが多く収録された短編集(22篇)。
著者の一面でもあるグロさの極めは「虫」「白昼夢」(既読分では「芋虫」)。その他印象に残った作品は「百面相役者」「踊る一寸法師」「お勢登場」「人でなしの恋」など。読者を選ぶ作品集ではあると思います。

No.1 7点 ミステリー三昧
(2009/09/29 19:51登録)
※以前読んだことのある『人間椅子』『お勢登場』『木馬は廻る』『白昼夢』『火星の運河』『押絵と旅する男』『目羅博士』『鏡地獄』は評価対象外です。
<ちくま文庫>江戸川乱歩の「怪奇幻想」に属する作品だけを集めた短編集です。明智小五郎or少年探偵団は登場しません。
私的ベストは『赤い部屋』・・・イタズラ好きの究極系「プロバビリティーの犯罪」を描いた作品です。「生」と「死」を言葉一つで操る変態青年の行為にゾクゾク感が止まりません。しかもラスト数ページの二転三転が「神懸かり」過ぎ。これを読んで「退屈」と感じる者はいないだろう。
万人にオススメできない私的裏ベストは『芋虫』『虫(蟲)』・・・「歪んだ愛」の究極系として高く評価したい。どちらのタイトルも人間の「ある姿(状態)」を表現していたことに、まず驚く。そして「愛」=「憎悪」の意味を知り、愕然とした。
次点は『防空壕』『一人二役』・・・究極の「妄想バカ」系として高く評価したい。思考回路が可笑しすぎる。思わず「ニヤリ」としてしまった。まさに愛すべき「バカ」だ。
次次点(?)は『双生児』・・・指紋トリックの盲点に驚かされた。当事者である犯人が、誇らしげに自ら体験談を語るという設定が微笑ましい。
総合してハズレがない。ただ中盤の中だるみが懸念材料。これは「名作で始まり、名作で終わる」といった構成(たぶん)なので仕様がない。ただ、未完成作品の『悪霊』『空気男』が同時に読めるのはレアかもしれない。

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