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ミステリの祭典

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仔羊の巣
ひきこもり探偵シリーズ

作家 坂木司
出版日2003年05月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2014/01/28 22:35登録)
再読です。
流れるような文体が好ましい、記述者の坂木とひきこもり探偵の鳥井が活躍する連作短編集第二弾。
なのだが、私は明らかにミスを犯していた。当然、シリーズ初作の『青空の卵』から読み直すべきだったのに、何気なく、本当に何気なく本書を手に取ってしまい、行きがかり上最後まで読まざるを得なかった。なぜ鳥井がひきこもりになったのかが、途中から気になって仕方なかった。本作ではその辺りに全く触れられておらず、前作で明らかにされているため重複を避けたと記憶している。まあ仕方あるまい、明日から前作をじっくり読むことにしよう。
さて本作はいわゆる日常の謎を扱った連作短編であるが、ややこのジャンルの他の作品とは一線を画していると思われる。それは、やはり鳥井がひきこもりなのに、他人に対してやけに強気な態度に出たり、或いは鳥井と坂木の妙な関係が影響しているのではないだろうか。詳しくは読んでいただくしかあるまい。
内容は、第一話は坂木の同僚の女性のおかしな挙動を、第二話は地下鉄のホームで一時間も風船を片手に立ち尽くす少年の謎を、最終話は坂木を付け狙う複数の女子高生の謎を、探偵役の鳥井が暴くというもの。
一話ごとに登場人物が増えていき、最後には一堂に会すという、創元社ではお馴染みのスタイルを踏襲している。派手さはないが、じんわりと心に沁み込んでくる感じの、なかなか味のある作品であった。教訓めいた会話もかなり多いが、押しつけがましさがない分、読んでいて苦痛を感じないように作り込まれている気がして、その意味では好感が持てる。

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