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ミステリの祭典

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血は冷たく流れる
異色作家短編集

作家 ロバート・ブロック
出版日1962年09月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 クリスティ再読
(2024/08/13 16:51登録)
さてブロックの異色作家短編集。ラヴクラフト直弟子でもあるから、他の巻よりホラー色が強めかな。うん、でも「異色作家」だから、ホラーとはいえ正攻法ではなくて、全然ホラーに見えなくてもオチだけホラーネタ、というのが多い印象。アイデアストーリー色が強い方だろう。技巧派で積極的に仕掛けてくるから、短めの作品にいい印象があるな。
それが駄洒落だったりすると軽く見られるかもしれないが、それでも薄気味悪いダブルミーニングで示されたら、いいじゃないか。それまでのプロセスがしっかりしているから、駄洒落オチも評者はあまり気にならないなあ。「治療」なんて精神科医を表す俗語の Head Shrinker を地でやってみるアホな力技は結構快感があったりしたね。
であとブロックの特徴というと、いわゆる「ハリウッド物」があること。井上雅彦の解説でもクトゥルフ神話と同格にブロックが「ハリウッド神話」をネタにしている、と指摘している。だからこれ、アンガーの「ハリウッド・バビロン」の小説版、といえばいいのか。井上氏は「映画界にただ一人存在する謎の女(ミス・ミステリ)」と称された女優の死とハイプでセンセーショナルな映画宣伝が絡んだ事件を扱った「べッツィーは生きている」をこのハリウッド物の典型作としている(実は最後の一行モノの秀作でもある)けども、ほぼほぼ「サイコ」と同じ世界観で同時期に書かれた「最後の演技」も、モーテルが舞台。このモーテルの主人、自室の壁じゅうに20〜30年代のボードビル界のスターたちの写真を貼りめぐらせて過去に浸る男。泊まった男がメイドとして働くその養女を誘惑するが、その結果は....結構グロ。うんでもさ、この写真の中に

おどろくほどハンサムな二人の男女の写真には「ジョージとグレイシー」と、サインしてある

そうだ。わかるかな、これヴァン・ダインで有名な、グレイシー・アレンとジョージ・バーンズだよね。あと「あの豪勢な墓を掘れ!」がジャズミュージシャンに恋人を取られる男の話を一種の吸血鬼譚として描いているのが面白い。怪異というのはノスタルジックなものなんだよ。

いやだから、ブロックって異色作家としては意外なくらいに長編作と共通する肌合いを感じたりする。本短編集で一番完成度の高いのは「名画」なんだろうけども、逆に言えばこういうのはブロックの個性は抑えめになる。「くじ」とか「おとなしい凶器」とか「レミング」と同じような古典短編だろう。

No.1 5点 mini
(2009/08/22 10:03登録)
異色短編作家ロバート・ブロックは、ヒチコック監督映画にもなった「サイコ」が最も有名だが、長編だと「サイコ」以外は他にあまり一般的高評価なものは無く、本質はやはり短編向きな作家なのだろう
特に得意なのが言葉のマジックで、”単語”に意味深なニュアンスを含ませる技巧が鮮やかである
ただし悪く言えば単なる言葉遊び駄洒落ネタに陥っているのもあり、先に書評を書いたジョン・コリアに比べるとちょっと格が落ちる気がしないでもない
むしろ「針」のような純粋にホラーとして書いた短編の方が本領が発揮されていると思った
もう一つの得意技が、演劇や映画業界に題材をとった作品群で数も多い
中でも「最後の演技」は戦慄の短編で、アイデア一発芸なのだが、このオチには思わずのけぞった
この短編集はどちらかと言えばミステリー寄りだが、もっとホラー短編の比率を増やした方が全体の水準が上がったのではないかな

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