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ミステリの祭典

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死の会計
銀行副頭取パトナム・サッチャー

作家 エマ・レイサン
出版日2005年02月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 7点 nukkam
(2016/05/06 15:01登録)
(ネタバレなしです) 1964年に発表され、1965年のCWA(英国推理作家協会)のシルヴァー・ダガー賞を受賞したジョン・サッチャーシリーズ第3作の本書は企業ミステリーでもありますがそれほど難解ではなく、すがすがしささえ感じさせる結末が心地いいし、謎解きとしてもある種のどんでん返し(着想の逆転といった方がいいかも)が巧さを感じさせます。読みやすいといっても会社勤務を経験していない読者だとこういう作品舞台がなじめやすいかは微妙かもしれませんが、初期代表作と評されるのも納得の1冊だと思います。

No.1 5点 mini
(2014/03/25 09:55登録)
昨日に早川ミステリマガジン5月号が発売されたが今月は発売日が1日早いのか?、特集は”MONEY MONEY MONEY”
つまり金融ミステリー特集という意味合いらしい、昨年の半沢ブームの便乗企画なんだろうか?、あるいは消費税増税直前企画か?

企業・金融ミステリーと言えば国内なら池井戸さんだが、海外だと第一人者は文句無くエマ・レイサンである、何たって付いた異名が”ウォール街のクリスティー”
レイサンは女性2人の合作作家で、夫婦含めて男女の合作コンビというのは全く珍しくないが、女性のみの合作は大変珍しい
活躍年代はディヴァインなどと同様の60年代、この60年代に関しては本格しか読まない読者はすぐに”本格不毛の時代”と嘆くが、こういう見方は必ずしも正しくない
そういう見方は本格しか興味の無い視点であり他のジャンルの動向が全く理解されていない、実は例えば40~50年代にあれほど全盛を誇ったハードボイルド派も不毛な時代だった
ロスマクの充実期なので見過ごされているがロスマク以外に60年代に目立った活躍をした狭い意味でのハードボイルド作家は居らず、ロスマク1人が気を吐いていただけなのだ、ハードボイルド派が復活を遂げるのは70年代ネオハードボイルド旋風以降である
警察小説なども総じて低調で、要するに60年代というのは冷戦を背景にした”スパイ小説の1人勝ち”の時代なのである、本格派だけが割を食ったわけじゃないのだ

そんな60年代に活躍したレイサンだけに、中には「小麦で殺人」のような国際関係を背景にしたものもある、本格派しか興味の無い読者って往々にして国際問題や諜報小説的な要素が入り込むのを嫌がる傾向が有るが、私はそうは思わない
大体が本格派の動機ってのは金や怨恨など決まりきったものが多く、スパイ小説的な要素を導入する事によって動機に広がりを持たせる事が出来るという利点が有る
もっとも本格派しか読まない読者の中には、”動機は重視しない”という志向の人も居るからなぁ

「死の会計」は作者初期の出世作で、いかにも企業経済ミステリーの典型で、らしさが出ているという意味では「小麦で殺人」よりも「死の会計」の方が代表作には相応しい
しかし「死の会計」は経済問題という観点で言えばセコい(笑)、私は背景に国際問題が絡むスケール感で「小麦で殺人」の方が面白かった

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