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ミステリの祭典

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黄金流砂

作家 中津文彦
出版日1982年09月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点
(2014/01/04 15:59登録)
高木彬光の『成吉思汗の秘密』でも扱われていた、源義経は平泉では死んでいなかったという言い伝えの紹介から始まるミステリです。盛岡で起こった歴史学者殺害事件を、新米新聞記者と、その学者の弟子だった高校教師が探っていきますが、義経北行説よりもむしろ、義経を匿った藤原家にまつわる歴史的謎の方が、現在の殺人事件と重要なつながりを持ってきます。
第28回乱歩賞を岡嶋二人の『焦茶色のパステル』と分け合った作品。前半が退屈だという審査員の意見もありますが、個人的にはむしろ前半の地味な展開を最後まで続けてもらいたかったように思いました。半ばで藤原家関係の、判読不能文字文書が出てきてからは、高木彬光のような歴史考証から虚構世界に移行していき、最後の現在の事件の全貌が明かされるシーンは、もう伝奇冒険小説と言ってもいいほどです。全体的なバランスを失していると思えます。

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