home

ミステリの祭典

login
下宿人

作家 ジョルジュ・シムノン
出版日不明
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点
(2009/03/31 23:00登録)
殺人者の視点から描かれた、シムノンらしい心理小説です。
殺人動機が、被害者の持つ大金を盗むためであるにもかかわらず、通常のミステリのような冷静さ・計算高さを主役は持っていません。なぜ彼は被害者を不必要に何度も殴打し続けたのか? この問いには犯人自身はっきり答えることはできないでしょう。カミュの『異邦人』の殺人理由が、太陽がまぶしかったからだというのと同じような感覚があります。ただし、本作は『異邦人』より8年も前に書かれていますが。
愛人の母親が営む下宿屋に転がり込んだ彼と、女主人や他の下宿人たち等との奇妙にねじれていく関係が、不条理感を出していて、ラストの海辺のシーンも印象に残ります。

1レコード表示中です 書評