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ミステリの祭典

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青酸クリームソーダ
鏡家サーガ

作家 佐藤友哉
出版日2009年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2019/12/31 22:22登録)
普通の大学生、鏡公彦18歳。ごくごく平均的な、何気なくコンビニエンスストアに行こうと思って出かけただけの夜。運悪く、最悪なことに目下殺人中の灰掛めじかに出会ってしまう。それを「見て」しまった責任を取らされる公彦。それは、めじかの「殺人の動機」を1週間の期限で探ることだった―。―ここから始める。ここから始まる―。「鏡家サーガ」入門編、遂に幕開け。
『BOOK』データベースより。

以前『フリッカー式』の書評でも述べましたが、相変わらずリアリティは欠片もありません。小説なんて所詮絵空事とは言え、そういう事もあるかもなと思わせるのもある意味必要であるのは事実です。その点、本作は徹底して現実性を排斥しており、言ってみれば劇画のようであります。色々無茶苦茶です。本格志向の読者は読むべきではないと断言できます。
ホワイダニットに特化していますが、その真相は明らかに想定内で、意外性は全くありません。ただ、長兄の潤一郎のフェイクの推理はなかなか面白かったと思います。まあ、本格の体を成してはいます。しかし、これは鏡家の兄弟の物語であり、特に潤一郎、稜子にスポットライトが当てられていて、公彦はあくまで語り手なのでしょう。佐藤友哉式が描く兄弟愛は捻じれていて、普通の感覚では理解が及ばないのではないかと思いますね。
余談ですが、本書には浦賀和宏をリスペクトしているような記述が見られます。というか好きなんですね?


【ネタバレ】


公彦は連続殺人鬼のめじかによって、胸に小型爆弾を埋め込まれますが、いくらでも解除できるチャンスがあったのに、なぜそれをしないのか。潤一郎の腕を持ってすれば、取り除くのに一時間もかからなかったはず。それを言っちゃお終いよって事なんでしょうけどね。
兄弟なのに、なぜ弟を突き放すのか、もっと親身になって弟の身を案じるのが一般的な家族のあり方のはず。その辺の感覚のズレが作品を異形の物語にしている気がします。

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