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ミステリの祭典

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連闘
競馬シリーズ/キット・フィールディング

作家 ディック・フランシス
出版日1987年12月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点
(2018/12/01 13:57登録)
 氷点下に近い二月のどんよりした日、障害騎手キット・フィールディングは心晴れぬ日々を送っていた。十一月に婚約したばかりの恋人ダニエル・ド・ブレスクが、馬主であるカシリア王女の甥、リツィ王子に心を移しているようなのだ。
 心中の憤懣を抑え、王女の所有馬カスケイドで勝ち鞍を挙げるキット。だが宿敵であるジョッキイ・クラブ理事メイナード・アラデックは、彼の失態を捉えようと片時も目を離さず見張り続けていた。
 執拗なメイナードの視線を振り切りレースを終えたキットは、王女のいる貴賓席に赴く。しかしそこには一人のフランス人がいた。その男アンリ・ナンテールは、彼女の夫ローラン・ド・ブレスクに委任状にサインさせるよう、王女を脅していたのだ。
 死んだ父親とローランが共同所有する建設会社。アンリは新建材の強化プラスチックを、銃器の製造に転用しようと企んでいるのだ。だがフランス政府の許可はローランの名声無しには得られない。そして兵器の売買は名誉を重んずるローランには堪え難いことだった。
 公私共に多事多難ながらも、アンリと対決する覚悟を決めるキット。だが脅迫の手始めとして勝利馬カスケイドを含む王女の持ち馬が殺され、さらに魔の手はダニエルやリツィ王子の身にも及ぶ・・・。
 競馬シリーズ第25作。前作「侵入」に続き主人公はキット・フィールディング。ネタバレがかなり詳細にありますので、老婆心ながら順番通りにお読み下さい。
 最初「これだから女はしょうがねーな」「前作の感動は何だったんだ」とか思いながら読んでましたが、ダニエル良い娘ですやん。完璧に疑ってました。すみません。
 「そのような歓びを味わうのには、人は、愛を失い、それを取り戻すことを、現実に体験しなければならないのだ」と本文にあるとおり、前作と合わせ二作で一冊ですね。面白さも「侵入」に劣りませんが、より深みが生じた分こちらの方が好み。
 脅迫者アンリ・ナンテールをどう無害化するかがストーリーの軸ですが、ラストは若干捻ってあります。ここで浮かび上がってくるのが老調教師ウィケムの存在。前作ではただのボケ爺さんでしたが、手塩に掛けた馬たちが次々に屠られる本作では「老ヘラクレス」に譬えられ、なかなか良い味出してます。この二編が人気があるのもなんとなく分かるような気がします。

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