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ミステリの祭典

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スタバトマーテル

作家 近藤史恵
出版日1996年07月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点
(2017/05/05 22:33登録)
通常はスターバト・マーテルと表記されるラテン語の "Stabat Mater"(嘆きの聖母)。キリスト教聖歌のひとつで多くの作曲家が曲を付けていることは、プロローグの後第1章が始まってすぐに説明されています。芸術大学の副手であるりり子の一人称形式で書かれた作品で、彼女がその部分で歌うのが、ペルゴレージ作曲のものなのです。また各章の頭には、この聖歌の一節が引用されていて、本作のテーマとなっていることが示されます。
しかし…この作品で描かれるのは、聖歌のわが子の崇高な死を嘆く母親の姿とは似ても似つかないおぞましい独占欲でした。サスペンスとしてのプロットと、その異様な話を軽快な文章で描きあげている点はよかったのですが、一方でりり子がオペラ歌手になることをあきらめた副手であるという特殊な設定は、聖歌と作品内容のギャップから見ても特に必要なかったかなと思えてしまいました。

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