世界暗号ミステリ傑作選 レイモンド・T・ボンド編/改題『暗号ミステリ傑作選』 |
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作家 | アンソロジー(海外編集者) |
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出版日 | 1977年10月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 5点 | 弾十六 | |
(2022/02/12 12:37登録) 1947年出版のアンソロジー。創元文庫(1980年初版)で読んでいます。 編集・序文はRaymond T. Bond、巻末に江戸川乱歩「類別トリック集成」(S29)の暗号部分を「解説」として収録。日本語版は原書から著名な三作を割愛(ポオ『黄金虫』、ドイル『踊る人形』、クリスティ『四人の容疑者』)。 暗号に特化したアンソロジーなので、これ実は暗号ネタだったんだ!という驚きがある作品にはちょっと不向き。序文に出てくる日本政府高官の茶番劇って、どんな顔して実行していたのか。わざとらしさが歌舞伎の一場面のようだ。 暗号の出来はABCDEの五段階で評価。暗号のもっともらしさと解読のロジックで判断。 以下、初出はFictionMag Indexで調べたもの。 ********** (1) The Puzzle Lock by R. Austin Freeman (初出Pearson’s Magazine 1925-3 挿絵Frank Wiles; Flynn’s 1925-2-28)「文字合わせ錠」フリーマン、大久保 康雄 訳: 評価6点 ソーンダイク博士もの。 あのミラー警部も震える恐怖。詳しいことは『ソーンダイク博士短篇全集Ⅲ』で書く予定。 暗号度C (2022-2-12記載) ********** (2) The Great Cipher by M. D. Post (初出The Red Book Magazine 1921-11)「大暗号」ポースト、大久保 康雄 訳: 評価7点 ジョンケル長官もの。 探検ってロマンだよね。これは気に入りました。語られる場所も良い。 暗号度A (2022-2-13記載) ********** (3) The Ministering Angel by E. C. Bentley (初出The Strand Magazine 1938-11 as “Trent and the Ministering Angel” 挿絵R. M. Chandler)「救いの天使」ベントリー、宇野 利泰 訳: 評価6点 トレントもの。 若い女は怖いね〜、という話で良い? 現物が無くても大丈夫って本当かなあ。 暗号度B (2022-2-12記載) ********** (4) The Treasure of Abbot Thomas by M. R. James (短篇集1904)「トマス僧院長の宝」ジェイムズ、紀田 順一郎 訳: 評価6点 語り口に工夫があるが、結末は物足りないなあ。 暗号度B (2022-2-13記載) ********** (5) QL 696. C9 by Anthony Boucher (初出EQMM 1943-5)「QL 696・C9」バウチャー、宇野 利泰 訳: 評価4点 ニック・ノーブルもの。 なんか変な流れ。謎もつまらない。キャラも生きてない。 暗号度C (2022-2-12記載) ********** (6) The Key in Michael by Elsa Barker (初出The Red Book Magazine 1927-1)「ミカエルの鍵」バーカー、池 央耿 訳 デクスター・ドレイクもの。 ********** (7) Calloway’s Code by O. Henry (初出Munsey's Magazine 1906-9)「キャロウェイの暗号」ヘンリー、大久保 康雄 訳 ********** (8) The Secret of the Singular Cipher by F. A. M. Webster (初出The Blue Magazine 1924-9 as “Old Ebbie Comes Back, No. VIII: The Secret of the Singular Cypher”)「比類なき暗号の秘密」ウェブスター、大久保 康雄 訳 オールド・エビーもの。 ********** (9) The Learned Adventure of the Dragon’s Head by Dorothy L. Sayers (短篇集1928)「龍頭の秘密の学究的解明」セイヤーズ、宇野 利泰 訳: 評価6点 ピーター卿もの。 子どもが良い子過ぎて残念。悪ガキに手こずるピーター卿が見たかった。話はセイヤーズらしくシンプル。古書の挿絵(p256)がMunster’s Cosmographia Universalis: Uncle, there’s a funny man hereで見ることが出来る。 暗号度D (2022-2-12記載) ********** (10) The Blackmailers by Harvey J. O’Higgins (短篇集1915)「恐喝団の暗号書」オヒギンズ、池 央耿 訳: 評価7点 バーニー・クックもの。シリーズ第一話。短篇集“The Adventures Of Detective Barney”(1915)には7篇が収録されている。 少年が探偵に憧れる感じが良く出ている。ハラハラ、ドキドキ加減がとても良い。 p292 電話の交換台◆当時の事務所にはつきもの。 p294 ニック・カーター◆当該シリーズはFrederick Van Rensselaer Dey(1861-1922)が1891年以降、創始者のJohn R. Coryell(1851-1924)を引き継いで書いていた。 p318 週6ドルとチップ◆ウェスタン・ユニオンのメッセンジャー・ボーイの稼ぎ。米国消費者物価指数基準1915/2022(27.84倍)で$1=3174円。月額82524円。 暗号度B (2022-2-14記載) ********** (11) The White Elephant by Margery Allingham (初出The Strand Magazine 1936-8 挿絵M. Mackinlay)「屑屋お払い」アリンガム、池 央耿 訳 キャンピオンもの。 ********** (12) Uncle Hyacinth by Alfred Noyes (初出The Saturday Evening Post 1918-2-2 挿絵画家不明)「ヒヤシンス伯父さん」ノイズ、吉田 誠一 訳: 評価7点 とても愉快な話。いかにもポスト誌、という感じ。時は第一次大戦中、アルゼンチンから客船が出港する。ルシタニア号事件(1915-5-7)でドイツ人は嫌われていたのだ。ラストの感じもバランスが取れていて良い。 p353 ブエノスアイレスのハロッズ支店♣️1914年開店。海外では唯一の支店だった。 p369 英国文壇に対する皮肉 p384 霊応盤 暗号度B (2022-2-14記載) ********** (13) The Stolen Christmas Box by Lillian de la Torre (初出EQMM 1946-1)「盗まれたクリスマス・プレゼント」デ・ラ・トーレ、吉田 誠一 訳 サミュエル・ジョンスン博士もの。 |