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ミステリの祭典

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木に登る犬

作家 日下圭介
出版日1982年04月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 6点
(2020/05/21 14:31登録)
 『鶯を呼ぶ少年』と併せ1982年に第35回日本推理作家協会賞短編部門を受賞した表題作を含む、著者の第三短編集。ちなみにこの時の長編賞は辻真先『アリスの国の殺人』。雑誌「問題小説」「オール讀物」「小説宝石」などに昭和年五十三(1978)年10月から昭和五十七(1982)年3月にかけて掲載された短篇十本を収録したもので、朝日新聞整理部を辞め作家業に専念する数年前の時期にあたります。
 新書判の紹介には地味ながら手堅く、動植物や昆虫を脇役に配した作風とありますが、それだけではありません。新聞記者出身ながらドキュメントよりもフランスの心理ミステリーを好むとある通り、本書を読むとむしろごく普通の人間が殺意を抱く瞬間や、疑惑を募らせる心の動き、さらにそれを利用した話の転がし方が上手い作家さんであるという印象を持ちます。作風は暗めですが、ミステリのコツを熟知している人です。
 そのあたりがよく出たのが疑心暗鬼の虜となった盲人の心理を描く「闇の奢り」。ある程度予測できる結末ですが、それでも良い仕上がりです。次に来るのは表題作か、単純にして効果的なトリックと動物オチでバランスのいい「遅すぎた手紙」。「夫の犯罪」や「奪われた遺書」も、変わった展開と切り口でなかなかのもの。
 全体に突出したものは無い代わりにハズレも少ない、安心して読める作品ばかりで、採点は6.5点。ただ、佳作とするにはもう一味欲しいところです。

No.1 8点 こう
(2008/12/09 23:35登録)
 社会派短編の名手と個人的に思っている日下圭介の短編集です。正直長編は「蝶たちは今・・・」一作しか読んだことがないのですが推理作家協会賞のアンソロジーで「木に登る犬」を読んでから短編集を読み始めましたが非常に質の高い作品集でした。
 本格的作品ではないのですが、動機や謎の行動の意図が良く考えられており、心情のすれ違い、勘違い」で暗転するストーリーは非常に皮肉が効いています。登場人物の心理、独白を上手く描写するのもうまいですしまた手紙のやりとりを上手く使っている作品も多いです。
 表題作が名前は一番有名でしょうが「緋色の記憶」「手紙」の手簡のみで構成されている作品が個人的には好きです。
 社会派的短編集としては模範的な作品集だと思います。

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