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ミステリの祭典

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作家 小杉健治
出版日1987年05月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点
(2015/07/28 09:35登録)
第41回日本推理作家協会賞受賞作。残念ながら直木賞は逃している。

夫殺しで裁かれる弓丘奈緒子。本人は殺しは認めるが、その動機に起因するであろう自身の不倫は認めない。一方、水木弁護士から引き継いだ原島弁護士は、無罪を主張する。夫には愛人がいる。奈緒子には隠された家族的な過去がある。そのあたりが関係しそうなのだが・・・。

裁判の一部始終が、子どものころ奈緒子に憧れを抱いていた取材記者の視点で語られる、終始、法廷場面という作品です。
一般の推理物なら刑事や探偵の聞き込みがあるし、法廷物であっても弁護士らによる調査があるのがふつうです。苦労して得た事実の積み重ねが読者を納得させるものですが、本作にはそれがいっさいありません。これを都合よすぎると感じないではない。
しかも、本作のような味もあり重みもある話は、文章もそれなりに重苦しくしたほうがいいのではとも思います。読みやすいことに文句を言うのはちょっとぜいたくかもw
とはいえ、広範囲の方々におススメできる作品といえるでしょう。

No.1 7点 こう
(2008/12/09 22:35登録)
 夫殺しの罪で妻が起訴され、凶器の購入、愛人の影など状況証拠が積み重なり本人も起訴事実を全面的に認めるが弁護士は無罪を信じ裁判を進めてゆく、というストーリーです。
 当然無罪なら何で夫殺しの罪を進んで認めるのか、誰をかばっているのか、ということが焦点になりますが小杉作品らしいしみじみした仕上がりとなっています。
 20年前の作品であり差別用語が使われているのは少し気になりますがこれは仕方ないでしょう。
 本格作品ではなく社会派的法廷ミステリですがしみじみした味わいがあり気に入っています。
 但しこの妻の考え、行動は最終的に説明されますが個人的には「そういう風に考えたり、行動したりするものかな」と疑問に感じますがそこは時代性が反映されているのかもしれません。本格的要素は正直ガードナーのものほども入っていませんがミステリとしてというより読み物として評価されるべき作家、作品かと思います。

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