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ミステリの祭典

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チャーリー・チャン最後の事件
チャーリー・チャン

作家 E・D・ビガーズ
出版日2008年11月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 mini
(2014/09/02 09:56登録)
先月末に論創社からE・D・ビガーズ「鍵のない家」とハーマン・ランドン「怪奇な屋敷」が刊行された
「怪奇な屋敷」は怪盗グレイ・ファントムものかと期待したら紹介文によると非シリーズの密室本格みたいに書かれていたのでちょっと残念

今回論創から出た「鍵のない家」はチャンシリーズの第1作目だが、最終作が題名通りの「チャーリー・チャン最後の事件」である、もっともチャンものは全部で6作しかないのだが
nukkamさんも御指摘の通りで、「最後の事件」と銘打った割には特に最後の事件らしい趣向は無い
原題を直訳すれば『鍵の番人』となるのだが、解説にもあるようにこの題名だと一種のネタバレっぽくなるのと二重の意味が掛けられているので日本語で表現するのが難しい
味気ない邦訳題名だけど無難に「最後の事件」としたのは仕方なかったかも知れない

昨今は真犯人の設定に関して○○○が存在するのを忌み嫌う読者が増えた気がするが、私は何でも○○○の存在を駄目と決め付ける風潮はどうかと思う、ケースバイケースだ、この作品ではある意味それが魅力になっているわけだし
ちなみに私は犯人は当ててしまった、直感ではあるがこの話の流れならこの人物かなぁと思ってたら当たってた、こういうタイプの隠し方だと何となく気付くよな

もう1つ言及したいのが館ものとしての舞台設定についてである
序盤は湖の畔に在る館に関係者一堂が集められる展開なので、この手の館ものばかり好むような読者にはピッタリンコ(笑)な設定なのだが、そこからビガーズらしさが出てくる(再笑)
途中から登場人物が2つのグループに分けられ、一方のグループは湖の対岸に建つリゾートホテルに逗留する事になって、探偵役や一部の関係者が船で湖を往復したりするのだ
2つのグループは、別に怪しい連中と犯行が行えなかったはずだという容疑除外グループとに意図的に仕分けされたわけじゃなくて、単なる成り行きと関係者の都合である
しかもチャンが近郊の小さな町に捜査に行く場面が有ったりで、「チャンの追跡」でも感じたのだがビガーズってクローズドサークルっぽい舞台を提供しながら意外と舞台場面があちこちに動くよな
終始関係者一堂が館や孤島に閉じ込められる設定ばかりを好む読者にとっては、そういう展開かと期待させておいて閉じ込められたままにならないのを不満に思うかも知れないが、クローズドサークルや館ものが大嫌いな私としては、そういう定型を外したところがビガーズという作家の好きな理由である

No.1 6点 nukkam
(2014/08/29 17:26登録)
(ネタバレなしです) 1932年発表のシリーズ第6作となった本書がE・D・ビガーズ(1884-1933)の最後の作品となりました。英語原題は「Keeper of the Keys」で、別に最終話的な演出はありません。登場人物はそこそこ多いですが、通常は最後まで容疑者は容疑者として扱うところを何人かは早い段階でチャンが容疑者から外していくのが珍しいプロットでした。後味のいい締めくくりはこの作者ならではです。しかしオリジナル小説はわずか6作しか書かれなかったのに、作者の死後も映画が作り続けられてその数は40本近いというのですから今では想像できないほどの人気があったのですね。

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