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ミステリの祭典

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股から覗く
探偵クラブ(国書刊行会)

作家 葛山二郎
出版日1992年07月
平均点3.00点
書評数1人

No.1 3点 人並由真
(2019/07/31 12:01登録)
(ネタバレなし)
 単純に文章がヘタとか悪文とか言っていいのかどうかは分からないが、ほぼ丸一冊、実に読みにくい作品ばかりであった(表題作はまだマシだったが)。

 主要登場人物の名前だけ書いてさしたる描写もなくストーリーを進める読み手に不親切な叙述とか、田舎のボケ老人の会話みたいな、やたらと「そうなったんだ」「やったんだ」的に行動の具体性を省略した代用的な話法も目立った気がする。
 昭和一けた~戦前のミステリ作家のその時期の作品だって、乱歩も正史も雨村も甲賀三郎も木々高太郎も大阪圭吉も今でも普通に読めるんだから、「高度な文学性」か何か知らないが、この作者の文章がやはりシンドイだけではないか。

 今回はそもそも芦辺拓センセの快作『帝都探偵大戦』で葛山二郎のレギュラー探偵・花丸弁護士が登場したので、そういえば昔『赤いペンキを買った女』を読んだなあ、しかし評判はいいはずなのに、どんな話だったか覚えていないなあ、と復習の意味も込めて本書を手に取ったが、その『赤い』にしても、ああ、こんなものか……であった。
(中略)によるアリバイって着想は確かにまあまあ面白いけれど、結局のところ、それの有効性って当初から疑義を抱かれるよね?

 昼間意識のはっきりした時間に読んでいても、睡魔と戦うばかりの読書。中では<ホームズのライヴァルたち>時代にならありそうな『古銭鑑賞家の死』と、名探偵が登場しても全然謎解きミステリでもトラブルシューターものでもない『慈善家名簿』がちょっとだけ良かったか。
 たぶん積極的にこの作者の作品を読むことは、もう二度とないでしょう。

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