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ミステリの祭典

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納骨堂の奥に
セーラ・ケリング

作家 シャーロット・マクラウド
出版日1989年03月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点
(2022/12/22 23:26登録)
たぶんシャンティ教授シリーズ開始以降は、コージーの代表的作家として知られるマクラウドですが、このセーラ・ケリングもの第1作に限ってはむしろサスペンス系だと思えます。一族の納骨堂の奥から発見される30年も前に殺された女の死体。納骨堂の奥を塞いでいたブロックから生じる夫と義母への疑惑。中盤不安をぬぐえないセーラを見舞うショッキングな出来事。クライマックスではセーラは相対する犯人に殺されそうになります。それがセーラの視点から描かれていくのですから、謎解き要素も持ったサスペンス作家が得意とするプロットでしょう。
miniさんご指摘のとおり、文書の隠し場所(隠し方と言うべきか?)アイディアは見事ですが、セーラがその文書に気づく段取りがまたサスペンス系っぽく、わくわくさせられるのです。
後の本シリーズ設定の大元になる事件でもありますので、やはり最初に読むべき作品でしょう。

No.1 7点 mini
(2013/01/08 10:00登録)
コージー派の元祖シャーロット・マクラウドには2つのシリーズが有って、1つは言うまでもなく農業大学構内を舞台にした”シャンディ教授”シリーズだが、もう1つの作者を代表するシリーズが若きヒロイン”セーラ・ケリング”のシリーズである

当サイトでジャンル投票システム導入の際、私は本格とコージー派の分離を提言主張したのだがその真意は次の通りだ
私はコージー派に対して、カーやクリスティなどの古典本格黄金時代の作品群と同じ視点・基準で採点するのは良くないと思っている
だって書かれた時代も全然違うしコージー派作家側も古典本格とは異なった視点で書いているわけだし、伏線の回収がどうだのロジックで犯人を指摘しているかどうかなどという基準で採点していたらコージー派作品は全部4~5点になっちゃうしね(笑)
コージー派は独自の基準で採点することによって、あくまでもコージー派の枠内で10点もあれば1点もあるという考え方である
したがってジャンル投票に於いて、コージー派作品にはなるべく良い意味で本格ではなくコージー派のレッテルを貼るようにしている、それは本格とは異なる基準で採点する為だ
ところがセーラ・ケリングもの第1作目「納骨堂の奥に」だけは本格にジャンル投票した、だってこれコージー派作品とは言えないもん
全編に渡って暗くほろ苦い話の連続で、これが能天気なシャンディ教授シリーズと同じ作者が書いたものとは思えない
セーラ・ケリングシリーズは2作目以降は普通のコージー派っぽくなっていくらしいのだが、第1作目だけは異色である
いったいこの第1作、シリーズの導入編として初期設定を整えるだけの為に書かれたのか、それとも当初は単発ノンシリーズとして書かれたものを好評によりシリーズ化したのか、判断に迷うところだ
「納骨堂の奥に」には素晴らしい秘密文書の隠し場所トリックが含まれており、実は採点として8点位付けようかと思ったのだが、ジャンルを考えると迷ったのだ
コージー派にジャンル投票してしまうとコージー派ならではの魅力には乏しいし、そうかと言って本格だけで見るとやはり7点くらいかなぁという感じだし
でも両ジャンルのボーダーライン上の作品として見たら8点はいけますよ、その位この設定を存分に活かしたコージー派らしい文書隠蔽トリックには驚いた、あっ、そうなるとやはりコージー派にジャンル投票すべきだったか(苦笑)

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