| 度胸 競馬シリーズ |
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| 作家 | ディック・フランシス |
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| 出版日 | 1968年01月 |
| 平均点 | 6.33点 |
| 書評数 | 3人 |
| No.3 | 6点 | 斎藤警部 | |
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(2026/05/06 21:15登録) 「なぜ知りたいのだ?」 「うまいやり方だと思ったから」 冒険ミステリとしては、破綻なくまとまった手堅い作り。 好漢小説としては、何かを突き崩しており、心の炎収まり難し。 土と草と馬の匂いや良し。 衆人環視パドックのど真ん中、主人公の目の前で有名騎手の拳銃自殺という(かの 『樽』 にも通じる)衝撃的オープニング。 その割にどこかしら緩く、ほんわり感さえ漂う前半。 但しそこには主人公や仲間の騎手たちが様々な要因 .. 不正疑惑 .. 遅刻常習 .. レース不調 .. 大怪我 .. 等で、現役騎手の第一線から退かされる事態が連発している。 この事象に不審を抱き、思い切った行動に出る主人公の、不屈の戦いの物語である。 (← 微かな叙述欺瞞入った?) 「○○しながら○○できるのは、なにもきみ一人だけではない」 ストーリーの真ん中に差し掛かり、不意の短いミスディレクションから襲いかかる急カーブのあたりから、物語の発熱が始まる。 じっくりと罠の包囲網を仕掛け、ささやかなホワットダニット興味を引き連れて、本気のじっとり復讐中継をたっぷり堪能させてくれるまでの流れは、なかなかのいやらしさと男気とが入り混じったエンタテインメントの光のアヴェニューである。 熱いぜ。 <駄馬ならフィンに乗らせればいい、恐れをぜんぜん知らない男だ> 黒幕特定がイージーに行き過ぎるようであったり、諸々意外性ってやつに背を向けていたり、E-BANKERさんおっしゃる通り、予定調和の圧が強過ぎる感はあります。 一方、そこに楔を打ち込むように、動機心理の際どい共有やら、そこからの離脱宣言?やら、何より、結局お互い大義名分を振りかざしての嗜虐実行発動ぶつかり合いなんじゃないかと訝しませてくれたり(と実は他にも一つ)、単純に割り切れない、重く引き摺る要素が睨みを効かせていると思います。 ちょっとだけほろ苦いようで本当は甘い家族関係と、なんだか甘すぎのようで特殊な葛藤もある恋愛関係(更にはこの二つが ‘○と○’ という点で繋がっているのも)ストーリーに良い意味での安全網を与え、また殊に後者は事件解決と冒険突破に大きな貢献をも果たしました。 いい感じです。 本当にちょっとした ‘こども’ 登場シーンや、最後におとなしく大活躍する可愛い ‘おうまさん’ もグッド。 四捨五入6点でも上の方(6.35超)ですね。 ラストシーン、そして最後の二行、特に最後の一行の響くこと響くこと。 これはちょっと、深いよね。 |
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| No.2 | 6点 | E-BANKER | |
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(2014/03/03 21:59登録) 1964年発表。原題“Nerve”。 「本命」に続く競馬シリーズの第二長編作品。 ~イギリスでも有数の騎手アート・マシューズがこともあろうに競馬場のパドックの中央で血しぶきをあげて自殺を遂げた。銃声はパドックにとどろき、スタンドの高い壁に反響した・・・。アートの死が引き金となったかのように次から次へと自殺し半狂乱に陥り、おちぶれていく騎手たち。彼らを恐怖のどん底に追いやる“怪物”の正体は何なのか? あまりに残酷な戦慄すべき競馬界の内幕を描き書評子をうならせた衝撃の作品~ よくまとまってる・・・そんな印象。 処女長編「本命」はサスペンス要素よりも本格ミステリーを彷彿させる「謎解き」要素が目に付いたが、本作ではそういった要素は薄い。 騎手たちを汚い手段で次々と貶めていく真犯人については、中盤過ぎにはほぼ明らかになってしまう。 (最後にドンデン返しがあるのかなと邪推したが、それはなかった・・・) 主人公で騎手であるフィンも真犯人にたどり着くのだが、手痛いしっぺ返しを食らうハメになるのだ。 そこからはサスペンスフルな展開が続き、九死に一生を得たフィンが逆に真犯人を罠にかける展開。 この辺りは前作でもあったプロットであり、サスペンスものの王道だろう。 最初は自分の腕に自信のない三流騎手だったフィンが、事件を通して一流騎手に育っていく姿も好ましい。 ただ、どうだろう? ちょっと予定調和過ぎるかなという印象は残った。 グイグイ読ませるし面白さも十分なのだけど、反面ちょっとインパクトに欠けるのは間違いない。 差し引きすると、水準+αという評価が妥当のような気がする。 (障害騎手って怪我が絶えないんだろうなぁ・・・) |
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| No.1 | 7点 | mini | |
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(2009/01/26 10:39登録) 初期の作で人気なのはシッド・ハレー初登場の「大穴」か、トリック愛好家に受けそうな「興奮」あたりだと思うが、悪役の個性という点で強い印象を残すのは「度胸」だろう 上記の三作のどれが一番好きかによって読者のタイプが三者三様に分かれるような典型的な三作ではないかな 三作の中ではヒーローものが好きな人には「大穴」、トリック愛好家にはやはり「興奮」が好まれるだろう 個人的には気品と格調の高さで第1作の「本命」なども捨て難いとは思うが 「度胸」はフランシスにしては気品に欠けるが、ねちねちといやらしい悪役の強烈さは忘れ難い印象を残す 私は未だフランシス初心者だけれど、読み込んでるファンの間では「大穴」や「興奮」よりもこの「度胸」を初期の代表作に挙げるファンは多い 私もあまり入門向きには思えない「大穴」などよりも、「度胸」から入門する方がベターな選択ではないかと思う |
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