(2016/09/15 18:19登録)
(ネタバレなしです) 英国の女性作家リンゼイ・デイヴィス(1949年生まれ)は歴史ミステリーのジャンルで最も人気ある作家の一人です。シリーズ主人公であるファルコはある時はローマ皇帝の命を受けた密偵として、またある時は私立探偵として難題を解決します。こう紹介すると古典的ハードボイルド小説に登場する「孤高のヒーロー型探偵」のように思えるかもしれませんが、家賃を滞納して大家の取りたてにびくびくしたり女性中心の家族に頭が上がらないなど情けない面も見せていて、読者に親しみやすいキャラクターになっています。デビュー作の「白銀の誓い」(1989年)では皇帝への反乱分子退治を、2作目の「青銅の翳り」(1990年)ではその残党処理を描いて冒険ロマン小説とハードボイルド小説をミックスしたような作品になっていますが1991年に発表されたシリーズ3作目の本書では私立探偵としてのファルコが描かれていて本格派推理小説の要素が強いのが特色です。かなり綱渡り的ですが変わった毒殺トリックが使われています。謎解き好きなら楽しめそうな作品ですが、その代わり過去の2作品に比べてスケール感では小ぢんまりしてますので読者の評価は分かれるかもしれません。
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