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ミステリの祭典

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マネキン人形殺害事件
ウェンズ氏、マレーズ警部

作家 S=A・ステーマン
出版日1976年08月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 mini
(2016/12/10 09:57登録)
論創社からピエール・ボアロー「震える石」と、S=A・ステーマン 「盗まれた指」が刊行された、今月分の配本は黄金時代のフランス本格派の競演という事ですな、両作共に舞台設定が古城だけにその手のばかり求めるような読者向きかも(笑)
ただしステーマンはフランス語圏ではあるが厳密にはベルギー作家である、名字がフランスというよりはドイツかオランダ風なのはそういう血筋なのでしょう、ベルギーという国はフランス、ドイツ、オランダの各文化圏の十字路みたいな地理関係に在るからね

S=A・ステーマンには探偵役で分類すると、マレーズ警部もの、ウェンズ氏もの、あと2作だけだが両者が競演するものとがある
今回論創から刊行されたのは、マレーズ警部が単独で探偵役となるシリーズ第1作である
次作では探偵役がマレーズ警部からウェンズ氏に代わるが、それが創元文庫から出て「21番地」と並んで現在入手容易な「六死人」である
「六死人」はウェンズ氏単独のシリーズ第1作だが、以降も単独だと交互に探偵役を務めるので、途中で探偵役を切り替えたのではなく最初から2つのシリーズを並行して書いていたという事になる
「六死人」も私は既読なんだけど、これは上記のようにウェンズ氏単独ものなので、今回の論創刊行の探偵役とは合わないから書評はまたの機会に

さて両探偵役の競演パターンだが面白い事に競演する2作はどちらも邦訳が有り、1つは昔に倒産した現代教養文庫で出たまま放置されている「ウェンズ氏の切り札」、そしてもう1作がこれも角川文庫で出たまま絶版状態の「マネキン人形殺害事件」なのである
2人のシリーズ探偵競演の両作はどちらも代表作の2つみたいに宣伝されて前評判だけは高かったが、いざ訳されてみると読者の反応は悪く以後話題にもならなかったという点も共通である
「マネキン人形殺害事件」は説明したように2人の探偵役が競演する作で、マレーズ警部が事件に巻き込まれ捜査の中心となり、ウェンズ氏は安楽椅子探偵に徹するという役割分担となっている
この作の最大の弱点は、当サイトでkanamoriさんも指摘しておられるように、マネキン人形が轢殺されなければならなかった納得出来る明確な理由付けが無い点で、単に読者に対する演出効果位の意味しか感じられない
この点は例の森事典でも指摘されているが、森氏は”中心トリックも唖然とさせられるような類ものである”、と酷評している
しかし私はトリックに関してはそんなに悪いとは思わなかった
特にプロローグで剥製屋事件の裁判が描写されるが、一見すると本題の事件とは何も関係無さそうなこの事件の直接手を下した犯人(?)が最後の最後で判明する趣向はなかなか面白い

No.1 6点 kanamori
(2010/04/10 14:01登録)
人形はなぜ殺される。
列車が臨時停車した田舎町でマレイズ警部が目撃したのは、心臓部にナイフが刺さって線路に置かれたマネキン人形だった。
人形のモデルとなった青年、飼い猫と続く怪死を、警部の友人ウェンズ氏が安楽椅子で解く、ミッシングリンクものの隠れた名作。
しかし、人形が殺される理由・・・必然性がないよなあ。

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