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ミステリの祭典

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肺魚楼の夜
有希真一

作家 谺健二
出版日2008年08月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点
(2013/06/01 11:27登録)
谺健二を読むのは初めてですが、阪神淡路大震災が人々に残した心理的傷跡をテーマにしながらも、いかにも「本格」的な怪奇な謎を提示して見せる作家だそうで。本作も、完全にホラーな出来事が起こったという殺人未遂事件で幕を開けます。犯人逮捕直前シーンのホラーぶりはなかなかのものでした。それ以前の、探偵役の有希が肺魚の怪物に襲われる悪夢めいたシーンも含め、偶然だらけのご都合主義ですが、こんな現象を起こして見せるには、偶然に頼らないと無理です。
犯人の計画や行動の面から見れば、不満も多いでしょう。たとえば犯人による写真トリックは、有希が解説する方法では実際には不可能です(実現可能にする別法あり)。
事件解決後にあるサプライズは、読者にとっては事件最大の謎に対する解答にもなっていると思いますが、やはり心理的偶然の積み重ねが理由の説得力を減じている気がして、すっきり感動とまではいきませんでした。

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