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ミステリの祭典

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世界でいちばん醜い子供
松浦純菜・八木剛士シリーズ

作家 浦賀和宏
出版日2007年04月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 メルカトル
(2020/11/29 22:15登録)
幸せだった純菜を、孤独な日々へと突き落とした“彼”との別れ。繋がりを失い、塞ぎ込んでいた彼女のもとへ一通の手紙が届けられる。その差出人こそ、2年前に巻き込まれた呪わしき轢き逃げ事件の関係者だった!恨み続けた犯人への手掛かりを掴んだ純菜は復讐を誓うが、同時に彼女の命は何者かの存在によって脅かされる。松浦純菜、絶体絶命の大ピンチ。
『BOOK』データベースより。

松浦純菜・八木剛士シリーズの番外編的な作品だと思っていたら、大間違いでした。まず純菜の一人称で語られるのが意外な点です。しかも八木は語られるだけで登場しません。終始「彼」という表現で出てきます。けれどそれで物足りない感覚は一切ありません。そこは純菜の内面が存分に描かれていることで十分補填されているからだと思います。そして多分彼女の身体の秘密が初めて語られた貴重な作品でもあります。私の中ではもっと早く、と言うか順番通り読みたかったなという思いはありますが、今回遅まきながら読んで心から良かったと思える一作でした。

正直、この話は純菜が八木を差し置いてロックバンド・メグローズのボーカルといちゃつく恋愛物だと勘違いしていました。ところがこれは立派な青春ミステリであり、本格ミステリだと断言して間違いないことに今更気づきました。評価は分かれるものと思われますが、個人的には大満足です。純菜の過去に何があったのか、本人の口から語られるとあって、流石に生々しさと彼女のやや歪んだ人間性なども垣間見られ、浦賀ファンとしては大きな収穫だったと言っても過言ではありませんでした。

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