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ミステリの祭典

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ポケットは犯罪のために 武蔵野クライムストーリー

作家 浅暮三文
出版日2006年10月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2018/06/19 03:12登録)
(ネタバレなし)
 置き引きを生業とする男「中央線の銀次」はその日の午後二時頃、うたた寝する中年男の頭上の網棚から彼の鞄をかっぱらう。その鞄の中に入っていたのは、書籍一冊分のミステリ小説を綴った原稿用紙の束だった。銀次はその内容を一読し、この原稿を効率よく金に替える算段を考えるが……。

 「メフィスト」誌に掲載された6本の単発ミステリ短編を、劇中作の小説として連続して並べ、それら各編の合間に、本書の刊行時に書き下ろされた新規キャラ・銀次のモノローグを入れてまとめた内容。まったく類似の前例がないわけではないが、ちょっと変った趣の連作ミステリである。ちなみにミステリ本編の第六話「五つのR」は、釣り好きの老人・村上の懐旧談を樫村青年と加藤刑事が聞く、この3人のやりとりで進行するのだが、コレは作者の別長編『殺しも鯖もMで始まる』の続編というか後日譚というか、とにかく同じシリーズでもあるらしい。

 6本の内容の大半は殺人とは無縁で犯罪性&事件性も希薄な、いわゆる日常の謎ティストのものが基本。サクサク読めるが、そのなかのいくつかは良い意味で小味なトリッキィさで悪くない(遺言の謎を扱った「フライヤーを追え」、町行く人が一様に薔薇の花を持ってる謎「薔薇一輪」、いつも白シャツの男がなぜかその日に限って赤シャツを着て帰ってきた「五つのR」あたりが個人的にはなかなか面白かった)。最後に明かされる仕掛けに関しては、作者が読み手を面白がらせたいほどには残念ながら乗れず、いまいち不発という感じだが、まあ一冊そこそこ、そんなに悪くはない。
 あえて不満といえば、表紙のねーちゃんみたいな、ぱんつ見せキャラが劇中にはっきりと登場しなかったことかな。そういうのもちょっぴり期待して読んだんだけど(笑)。
(ちなみに「五つのR」の中で、前述の村上爺さんが「最近の若い娘は、勝負パンツをどうのこうの」とかなんとか話題にするのだが、もしかしたらコレは、そのネタで描かれたジャケットカバーのイラストだったのだろうか)。

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