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ミステリの祭典

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バルーン・タウンの殺人
「バルーン・タウン」シリーズ

作家 松尾由美
出版日1994年01月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 麝香福郎
(2023/03/11 22:45登録)
舞台は人工子宮による出産が一般化した近未来。その中で、あえて自腹の出産を選んだ女性のために用意された妊婦だけの街が東京都第七特別区、通称バルーン・タウン。
妊婦の街で起きる事件を妊婦探偵が解決する。その謎解きと舞台背景のミスマッチが本書の眼目。特別状況下のSFミステリと言えば、ジョン・ヴァーリイの短編「バービーはなぜ殺される」が思い浮かぶところで、表題作自体「バービー」の本歌取りなんだが、全体を通して見ると、山口雅也のキッド・ピストルズシリーズなど異色のパズラーに近い印象。
複数の目撃者がいながら犯人を特定できない表題作、穴だらけの密室ものの「バルーン・タウンの密室」、「赤毛連盟」を下敷きにした「亀腹同盟」、そしてクリスティーのパスティーシュ「なぜ助産婦に頼まなかったのか」とミステリファンなら思わずにやりとするタイトルが並ぶ。ユーモラスな語り口もさることながら、設定を生かしたオリジナルトリックの魅力が光る。

No.1 6点 kanamori
(2010/05/29 16:34登録)
妊婦だけが住む街を舞台にしたSFミステリの連作短編集第1弾。
いくつかの作品で、有名古典ミステリの趣向をパロっているのが面白い。「なぜ、助産婦に頼まなかったのか?」はクリステイで、創元推理文庫版のみ収録の「バルーン・タウンの裏窓」はアイリッシュの名作のパロデイ。
「亀腹同盟」はホームズづくしで、赤髪連盟、六つのナポレオン像、踊る人形の趣向をうまく取り入れていて、結末に意外性もあり、これが私的ベスト。

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