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ミステリの祭典

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ケンブリッジ大学の殺人

作家 グリン・ダニエル
出版日2008年05月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 nukkam
(2014/08/13 10:06登録)
(ネタバレなしです) 英国のグリン・ダニエル(1914-1986)はケンブリッジ大学の教授でしたが、あるミステリーを読んで窓から投げ捨てたくなるほど腹が立ち(どんなミステリーだろう?)、誰だってこれより巧く書けるぞと発言したのがきっかけで本書を執筆したそうです。内容は犯人当て本格派推理小説で、大学教授が大学を舞台にして書いた作品ながら教養知識や学説を披露する場面がほとんどなく謎解きに集中しています。推理が大変緻密で様々な可能性を細かく検証していくプロットなのですが、惜しくらむは一本調子気味なこと。劇的な展開がなく漫然と読むと退屈しかねません(分量もそれなりにあります)。

No.1 6点 mini
(2014/06/23 09:55登録)
* 私的読書テーマ、今年の生誕100周年作家を漁る、第5弾はグリン・ダニエルだ
今年の生誕100周年作家には大物が少なく逆にマニアックな作家が多い、密室派短篇のジョセフ・カミングスなどはそんな典型だろうが、長編も書いているがよく”幻の本格派”と呼ばれるタイプが居る

”幻の本格派作家”という言葉には特に定義が有るわけじゃないが、単に埋もれていたというだけの意味じゃないと思う
もちろんその手の作家も何人も居るが、それはただ翻訳紹介から漏れていただけであって、そういうのは日本の読者の求めるものや紹介者の思想の偏りが原因である、まぁ過去のタイミングの悪さもあろうか
しかし”幻の”という形容が付いた場合、もう一つの埋もれていた原因が存在する、それは”総著作数が少ない”、つまり超寡作だという事だ、2~3作しかないとかね
英国の戦後本格派で長編が2~3作しかない幻扱いされる作家が2人居る、スタンリー・ハイランドとグリン・ダニエルである

本来ならかなりマニアックな作家なんだけど、これが翻訳されて普通に読める状況ってのは良く考えると日本の出版社も凄いな
しかもハイランドは国書刊行会だからまだいかにもだけど、グリン・ダニエルは扶桑社文庫だからねえ、扶桑社文庫ってクェンティン「悪女パズル」とかたまにエッ?というの出す時有るよな
先に読んだのはハイランドでこれは埋もれてた傑作だと思ったが、ダニエルの方は正直微妙
小林晋氏や森英俊氏は精緻で緻密なプロットと評しているが、悪く言えば整理不足なプロットに思う
それが持ち味なんだろうけど、真相も中途半端に複雑で、これといったアイデアが有るわけでもない
また大学教授が書いたカレッジミステリな割には、マイケル・イネスみたいな教養が滲み出たユーモアや薀蓄に乏しく、単なる謎解きパズルに徹し過ぎているのも感心しない、まぁパズル的要素しか興味が無いタイプの読者には無駄が少ないと感じるかも知れないが
名作なのだろうけどもう1つ印象が薄いというか評価の難しい作品だった

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