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ミステリの祭典

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醜聞の館-ゴア大佐第三の事件
ワイカム・ゴア大佐

作家 リン・ブロック
出版日2005年07月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 nukkam
(2018/06/09 09:36登録)
(ネタバレなしです) 1927年発表のゴア大佐シリーズ第3作の本格派推理小説です。英国初版は「ゴア大佐第三の事件」というそっけないタイトルで、「The Kink」(「醜聞の館」はかなりの意訳で第19章でゴアが語る「歪み」が直訳に近いです)というタイトルは米国版で付けられました。いきなりゴアが行方不明事件を捜査している場面で幕開けしますがこれはわずか2章で(すっきりしない部分もありますが)解決してしまいます。3章からは盗難事件の解決を依頼されます。地味な文章で地味な事件の捜査を描くので盛り上がりに乏しいプロットです。事件の背景にかなり乱れた人間関係があることが明らかになるのですがあまりにも抑制された文章なので、注意力の足りない私は一読では理解しきれませんでした。使用人階級の人物も(公平に?)容疑者にしたり殺人事件の謎解きをゴアが意図的に説明を避けたりと、同時代のミステリーと比べて作品個性は確かにありますがどちらかといえば通の読者向けではという気がします。

No.1 6点 mini
(2009/08/24 10:13登録)
ヴァン・ダインの「ウィンター殺人事件」には評論のようなものが併録されているが、その中にリン・ブロックという名前が出てくる
このリン・ブロックは戦前から名前だけは知られていたようで、以来何度も翻訳出版の噂が立っては消えた幻の作家であった
第1作と2作は未だ幻のままだが、この第3作が順番は悪いが数年前についに翻訳され、海外古典における論創社の貢献度は計り知れない
第1作ではなかったのは、何か権利関係とかの都合でもあったのだろうか?

さていざ読んだ人の間では賛否両論のようで、案外とがっかりしたという意見もあるようだが、しかしそれは1930年代のクイーンやカーみたいなのを期待するからだろう
リン・ブロックは活躍時期が20年代であり、若干前の時代の作家なので、比べるべき作家達が違う
それどころか20年代真っ只中の他の作家と比べたらはるかに現代的なのに驚く
内容は全く本格ではあるが、後に30年代に興隆となるハードボイルドを思わせるような雰囲気や、男女の倫理観など、時代を先取りしている
まあ日本の読者の悪い習性で、トリックがどうだとか、そういう観点でしか見ない人が多いからなあ

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