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ミステリの祭典

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私兵刑事

作家 佐野洋
出版日1989年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2026/07/28 01:59登録)
(ネタバレなし)
「私」こと、北海道警察に奉職する33歳の巡査部長・中島竜次郎。その中島は、同棲中の恋人で30歳の小出智子にひそかに借金の連帯保証人にされ、350万円の債務を押し付けられながら失踪された。そんな時、中島を援助したのは、53歳の実業家で「野宮物産」の社長である野宮市朗だった。野宮は以前に娘の比沙子が非行に走りかけた際に中島に救われた経緯があり、その恩を返すという意味で中島の負債を清算した。以降、中島は警察官の職務ぎりぎり、あるいはそれすらはみ出す形で野宮に細かい便宜をはかっていたが、そんな野宮の周辺で、動物たちの毒殺事件と脅迫らしい出来事が起きる。

 光文社文庫版で読了。主人公の中島の視点で警察機構の組織図を覗きながら、半ば悪徳刑事もの(そこまではいかないが)めいた味わいも感じさせ、ストーリーの適度な錯綜ぶりで読ませる長編。
 主軸の謎となるのは、野宮周辺の不穏な動きにからむ秘密だが、そこにいくつかの脇筋の物語も絡み合ってくる。
 
 作劇の都合論か、ある案件に関して主人公の中島の血のめぐりがいささか緩慢なのはちょっとよろしくないが、多様な登場人物を器用に配置した筋立てには熟練作家らしいリーダビリティがあり、それなりに楽しめる。
 どうでもいいが、不倫した人妻は、事後に夕食などの買い物をして帰るのがよくあることだとか、興味深いトリヴィアも教えてもらった(笑)。
 ラストはミステリとしてそれなりのツイストを見せた上で、人間ドラマ的な趣のクロージングで締めくくられる。
 佐野洋の作品はそれなりに読んでいるつもりなので、今回のシメは……とか少し勝手に予想したが、結果は……ムニャムニャ。まあ、まとまりはいい。

 大人向けのエロさや当時の時代色などの猥雑さもフレーバーにした、ミステリとしての精度もそれなりに感じさせる佳作~秀作の下。

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