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ミステリの祭典

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世界怪奇実話傑作選
牧逸馬、島田荘司編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日2026年06月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 kanamori
(2026/09/17 14:00登録)
長谷川海太郎は、1928年に中央公論社の特派員として欧州に滞在、ロンドンの大型古書店で怪奇事件の資料を買い漁り、帰国後に同社の中央公論に1929年から33年にかけて牧逸馬のペンネームで、その資料を元に33編の犯罪実話を連載し評判になる。林不忘名義の丹下左膳シリーズの人気もあって一躍流行作家になった。本書は、中央公論に掲載した怪奇実話の中から島田荘司が、資料的価値や物語としての面白さ、ミステリー界に与えた影響などを考慮し14編を選んだ傑作選です。

もっとも、昭和の初めの日本のほとんどの読者にとっては、目新しく興味深いエピソードということもあったのでしょう。その辺の時代性を考慮する必要はあります。
「切り裂きジャック」や「タイタニック号沈没」などは、後年多くの研究書や関連書籍が出ていますから、さほど興味を惹く部分がないということもあります。ただ、事件直後のメディアの扱い方は多少気になりました。切り裂きジャックの想定犯人像が当初から外国人の外科医を挙げていたとは思わなかった。タイタニック号の惨事は、生死を分けた幾つかの群像劇とは別に、電信係のSOS打電に関する行き違いのエピソードが印象的です。
「マリー・セレスト号」の謎は事実のみの記載で物足りない感じがありますが、まあこれは実話を記すものなので、推理推測の類いがないのはやむを得ない。
「怪奇実話」といっても、猟奇的犯罪や惨劇ばかりではなく、奇々怪々な珍妙な事案などあり結構バラエティーに富んでいるのが面白い。「テネシー州、猿裁判」は聖書原理主義者がアンチ進化論を裁判の対象にした話、「マタ・ハリ」は第一次大戦時のドイツ諜報部門の踊り子の女スパイのエピソードで、共に初めて読む話で興味深かった。
最後に「クリッペン事件 血の三角形」ですが、名前はピーター・ラヴゼイの「偽のデュー警部」のオマージュの元ネタということで知ってはいましたが、これが滅法面白かった。まるで謎解きミステリ顔負けのどんでん返しあり、クリッペン医師が毒殺の知識を得るためコナン・ドイルに再三接触するエピソード、愛人を男装させカナダを目指し豪華客船で高跳びする、大西洋のデュー警部の追跡劇とサスペンスフルな逮捕劇などなど。
おまけに、近年実施したDNA鑑定では地下室から見つかった遺体はクリッペンの妻のものではなく、冤罪が取り沙汰されているらしいとか。本物のデュー警部の立場はどうなるw まあ100年前の事件なので、どうにもならない。

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