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ミステリの祭典

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シシリアン

作家 オーギュスト・ル・ブルトン
出版日不明
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 クリスティ再読
(2026/07/14 16:01登録)
映画「シシリアン」というと、1969年のドロン・ギャバン・ヴァンチュラのフレンチ・ノワールと、1987年のチミノ監督の「ゴッドファーザー」番外編みたいなシチリアの義賊を扱ったハリウッド映画があるけど、古い方の映画原作。でこれが、セリ・ノワールの大物作家でありながら翻訳困難が災いして訳書のやたら少ないル・ブルトンの数少ない翻訳書。

ブルトンだからね、当然主人公ロジェ・サルテは、二つ名は「五月の蠅(ムーシュ)」あるいは「金曜日のプチ・グロ」と呼ばれる暗黒街(ミリュー)で名を売ったギャングである。このムーシュはあえなくギャング特捜隊を指揮するル・ゴフ警部に逮捕されるが、取り調べの最中に護送車から脱走した。手引きをしたのはムーシュと以前組んで仕事をしたことのある「シチリア人」のアルド・マナレーゼだった。アルドは自身の一家総出でムーシュを匿うが、ムーシュの高額切手コレクションがその対価だった。表向きは家長のサルヴァトーレに率いられるイタリア人食料品店一家。妻マリア、長男アルドとその嫁ジャンヌ、長女テレーザと夫のルイス・ボルダン、次男セルジオ...彼らは鉄の掟のマフィアの一家なのだった。コレクションが惜しいムーシュは新しい仕事をマナレーゼ一家に持ちかける。フランスからアメリカに空輸される、展示会用の宝石装飾品輸送を襲おうという計画だった。サルヴァトーレはアメリカのマフィアとも深いつながりがあり、そして、マナレーゼ一家・アメリカのマフィアのビットリオ一家・フランス人ギャングのムーシェが組んだ大仕事が幕を開ける。ジャンボ・ジェットをハイジャックして工事中のハイウェイに着陸させて逃れようという計画だった!

こんな話。だから部外者ムーシュから見たマフィア、というのが作品価値。ホントに家族経営で、男も女も家長の権威とシシリアンの誇りと掟によって、強烈な団結心で動く「部族(クラン)」なのが興味深い。脱走囚ムーシュを追求するル・ゴフ警部らギャング特捜隊の追及と、進行するハイジャック計画を巡って話が進んでいく。まあ、ハイジャックも日本赤軍とか流行前だから、セキュリティ・チェックが甘々だったんだなあ(苦笑)。

言うまでもなく読みどころは、極端に短いマシンガン調の文章。

ル・ゴフとサルバトーレの視線が合った。ル・ゴフ。ブルターニュの生まれだった。神と神の教えは、生まれ落ちた時からの糧だった。石の柱に背をもたせかける。何世紀も、尖塔を支えつづけた石の円柱。背をもたせかけて、サルバトーレとマリアの姿を見送った。二人。進んで行く。老いたるシチリアの夫と妻。

これが「しっとりとした」最終場面。そういうあたりがセリ・ノワールという文芸のエクストリームな面白さになっている。前衛小説と呼んでもいいくらい。
(アラン・ドロンくらいサングラスの似合う俳優っていないな)

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