(2026/07/25 07:28登録)
(ネタバレなしです) 日影丈吉(1908-1991)は長編作品にはシリーズ探偵は登場しないようですが、短編ではハイカラ右京(右京慎策)や春日検事などのシリーズ作品があります。ハイカラ右京シリーズは1954年から1956年にかけて13作品が雑誌掲載され、「九つの顔」(1958年)と「仮面紳士」(雄山閣出版)(1961年)の2つの短編集、または「ハイカラ右京探偵暦」(1978年)で全作読むことができました。ところが「明治吸血鬼」(1984年)と「狼男の恋」(1985年)の2作が新たに発表されて全15作になったので、これから読もうとする場合は「ハイカラ右京探偵全集」(1996年)以降の単行本を探すことを勧めます。私は「仮面紳士」(光文社文庫)(2026年)で読みました。シリーズ第1作の「舶来幻術師」(1954年)では乱れた人間関係、第2作の「明治の青髭」(1954年)では少年連続殺人事件が描かれ、ハイカラどころかドロドロではないかとびびりましたが、後の作品になると余裕が出たのか「美人通り魔」(1956年)では右京に「読者はもう知ってるぜ」と語らせたり、「双児の復讐」(1956年)では人を食ったような自己紹介させています。本格派推理小説ではありますけど右京は真相はこうだったと説明しますが捜査や推理のプロセスについてはあまり言及しないので謎解きとしては物足りなく感じます。また作中時代を明治時代に設定したためか難解な文章表現が織り込まれていますので、それが時代を感じさせると好意的に捉えるか読みにくいと批判的に捉えるかは読者次第でしょう。個人的なお気に入りはどんでん返しの鮮やかな「当世錬金術」(1954年)とパロディー要素が印象的な「右京の閑日月」(1955年)です。
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