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ミステリの祭典

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離愁

作家 ジョルジュ・シムノン
出版日不明
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 クリスティ再読
(2026/06/28 14:04登録)
さてシムノン未読も少なくなってきたが、本作は映画はトランティニャンとロミー・シュナイダーで有名作。評判がいいので思わずDVDをゲットしたので、のちに追記することにする。ミステリ色はかなり薄いけど、ラストシーンを深読みすると、ひょっとしてミステリかもしれない。

1940年5月、ドイツ軍はオランダとベルギーの国境を越えて、フランス国内に殺到した。ベルギー国境近くの町フュメイに住むラジオ商マルセルは、妻のジャンヌと娘のソフィーを連れてフランス南部への脱出を図る。しかし、妻子は女性用の客車に、マルセルは有蓋家畜車両に分乗することになる。軍事輸送をやり過ごす待機や敵機の空襲などを経て、車両は繋ぎ変えられて、マルセルは妻子とはぐれてしまう。マルセルが乗る車両に後で乗り込んできた女性、アンナとマルセルは男女の仲になってしまい、逃避行を共にする。フランス中西部のラ・ロシェルに到着した二人は....

シムノンはこの開戦の段階でラ・ロシェル近辺でベルギー難民の受け入れの公職についていたりするから、シムノンの実際の見聞ベースの話である。とはいえ、戦争小説であるか、というとずいぶん違って、たまたま同じ車両に乗り合わせて極限状態を共にした男女の結びつきの話。あえて「恋」とか呼びたくない。マルセルには逃避行で生き別れた妻子があり、それをラ・ロシェルでは探すのが仕事。アンナはユダヤ系チェコ人亡命者のようで、侵攻までは監獄にいたらしい。そんな男女のたまたまの遭遇と関係をえがく、けっこう機微の微妙な小説。まあシムノン、こういうあたりは親切に説明したりしない作家だからねえ。

恋でもない、不倫でもない、アヴァンチュールでもない、買春でもない、運命でもない、苦難を乗り越えた者の同志的結合でもない、憐みでもない、そういう説明しがたい男女関係だ。だから小説のラストシーンはある残酷な真相をそれとなく示している。映画は結末が違うようなので、それを楽しみにしよう。

追記:映画見た。反戦メロドラマという結末。映画だったらこれが正解だというのはよくわかる。余計なことだが、小説では主人公の母は第一次大戦の対独協力者として坊主頭にさせられた描写があるんだ。シムノンの戦時中の行動が、戦後の一時期アメリカ移住した原因にもなっているわけで、シムノンは相当屈折しているよ。

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