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ミステリの祭典

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普通の底

作家 月村了衛
出版日2025年04月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 HORNET
(2026/05/25 22:59登録)
 ある青年から届いた手紙。そこには幼少期から「普通」を願って生きてきた半生が綴られていた。教育熱心な母親、少し距離のある父親、一般的な友達付き合い。多少の挫折はあっても、彼は「普通」の軌道に乗り続けているはずだったのに―。高校時代の同級生からの、ひょんな誘いをきっかけにその歯車が狂っていき、行きついた先は―僕が悪いのでしょうか?ただ「普通に」生きたかっただけなのに…

 主人公の「手記」ともいえる手紙で、少しずつ歯車が狂い始めていく半生を描く物語は、取り立てて特異なものではないかもしれないが、昨今の世情も反映した内容で読ませるものがある。特に主人公の転機となった高校3年時のエピソードは、「波風立たせずにうまく乗り切ろう」とした悪意のない処世術が、のちのち自分の首を絞めていく結果になり、同情を覚えてしまうところもある。
 要所要所で確固たる自分の意思を示せなかった主人公にも罪はあるかもしれないが、積極的に悪に加担しようとしていないはずなのに引き返せないところまで行ってしまう、その構図を巧みに描いていて、非常に興味を惹かれる一作だった。

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