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ミステリの祭典

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三つの顔

作家 カトリーヌ・アルレー
出版日1980年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2026/05/06 19:50登録)
(ネタバレなし)
 大成した実業家で大富豪である57歳のトマ・モンラヴェル。だがその息子で24歳のアンリ・ピエールは少女をレイプの上、惨殺した。息子の死刑確定が免れないなか、モンラヴェルはアンリの恋人を自宅に迎え入れ、さらにはアンリの知己の同性の友人を訪ね、不透明な息子の心象を探ろうとする。

 1976年のフランス作品。ミステリ要素は事実上ほとんどない長編で、重大な犯罪事件を主題にしただけの作品。

 ただ、どうしようもない不可抗力の事態(そこまで道義的にも重大な犯罪を起こしたから処刑確定のロジック)を前にジタバタあがく、自分が動けばなんかちょっとでも状況が好転するんじゃないかと錯覚してしまう主人公モンラヴェルの心情は、実によくわかる。結局、大したことは何もできないし、何ともならないんだけれどね。
(もちろん、ストーリー上の起承転結は相応にあるが、そこまで言うとネタバレだと思うので。それは言わない。)

 二百数十ページとそんなに厚くない紙幅だが、活字の級数が小さ目で章によっては会話も少ないので、小説的な満腹感はある。広義のホワイダニット? まあそうですが、どっちかというとモンラヴェルがどこで現実を前に、心の折り合いをつけるのか、がテーマの作品。
 アルレーがミステリから片足踏み外しちゃった内容ではあるが、まあこれはこれで。
 なおタイトルの意味は、小説作中では終盤で語られる。

 評点は、この点数の中での上の方で。

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