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ミステリの祭典

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探偵物語

作家 別役実
出版日不明
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 クリスティ再読
(2026/05/05 10:45登録)
「探偵物語」にはもうあと2つ作品が存在するんだね。別役実の小説と、ワイラー監督の映画である。ワイラーの映画はシドニー・キングスレーの戯曲を原作にしたもので、これは早川書房から翻訳がでているようだ。

とりあえず別役実の本作。これはショートショート集「探偵X氏の事件」、童話の「さばくの町のXたんてい」と同一キャラを主人公にした連作シリーズで、本書は4作の短篇と1作のショートショートを収録。
不条理演劇で名を馳せた別役実だからね、このX氏は探偵とは言いながら、真相を解明するというよりも自ら事件を起こしかねないトリックスターである。ちょいとブラウン神父風のとぼけたキャラだけど、ブラウン神父みたいに切れ味のいい逆説を開陳するのではなくて、X氏本人が不条理な逆説でしかないような話なんだ(苦笑)実際、町の人々は「X氏が探偵である」ことを認識しながらも「この街の探偵は誰でしょう」と尋ねられたら皆困惑してしまう....論理の軸がねじれた世界なのである。

表面的には星新一風の抽象性が目立つんだ。キャラはすべて「Q氏」とか「R主任警部」とか、星新一のエヌ氏の要領。しかしSFではなてくて、探偵という存在自体を不条理として捉える「メタ」視点の話なのだ。

往々にして人は、事件を解決しさえすれば全てそれを探偵と呼ぶ。しかし、そうではない。人は、まず探偵にならなければならないのであり、次いで事件を解決するのである。

とこれが本書のキートーン。論理的なのだが、その論理の筋がちょいと狂っていて、それがファンタジーを呼んでいる。カミのルーフォック・オルメス氏を意識しているのはまあ間違いないのだが、ダメ探偵なのは違いなくて、もちょっと物悲しい。

最初の「X氏登場」はそんなX氏の紹介。「夕日事件」はX氏の元に届いた白紙の手紙を基に、一応推理っぽいことはして手紙の真意を解明するのだが、その解明が逆に手紙の主がX氏に要求したことを阻害するという逆説。いやこれ深いかも?探偵することが真相からどんどん遠ざかる。探偵することで夕日の真実を見失う。ナイス。

「管理人失踪事件」は自転車を食べた男T氏が、次はバスを食べることにチャレンジ。しかし、閉じこもった男を監視するために雇われたD氏が失踪...D氏の代わりにT氏と閉じこもったX氏の運命は?
「大女殺人事件」はX氏が偶然遭遇してしまった殺人事件!倉庫街に転がった女プロレスラー上がりの大女殺しに巻き込まれたX氏は犯人を見つけられるかww問題なくミステリです(大笑)一応アリバイトリックがあったりしますw

というわけで、奇抜でファンタジックな小説。たしかに「探偵物語」。このタイトルにはグウの音もでない。

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