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ミステリの祭典

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モダン殺人倶楽部
新青年傑作選集Ⅱ・推理編2  中島河太郎 編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日不明
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 斎藤警部
(2026/04/28 01:30登録)
死体昇天  角田喜久雄
「水筒は?」   北アルプスを舞台に、三角関係と遭難死。 “血痕の位置” なるあまりに劇的な物証を引き連れ迫り来る、不可解事象の突風。 雰囲気たっぷり。 管轄老署長の意外な閃きと、自然の力が関与する大型物理トリックが、泣かせ所を見事に突いた。 包み込むようなエンディングが良い。 妙に絵解きマンガチックな(新青年掲載時の)挿絵も良い意味で気が抜けて、良い。  7点

精神分析  水上呂理(ろり)
いくつもの恋模様が重なり合った襞の奥から光を放つ、手を変え品を変え連続◯◯妨害事件の真相の深層。 端正にして濃密無比な文体に、あっけらかんとしたエンド。 憎めない一篇だが、 三つの謎事象への推理と解決が鮮やか。 偉大なるアマチュアリズムを感じる。  7点

人間灰(にんげんかい)  海野十三
特殊工場を舞台に、スパンの長い連続失踪事件と、謎の血まみれ男。 脳内映像が映える。 動機の不可解さを単なる◯◯の二文字で片づけてしまったのはいかにも・・・ ちょっと××過ぎる感のあるタイトルといい、物理興味ばかり全面に出てしまうのは、やはり人間ドラマ的な綾は得意でなくて良しとする割り切りか。  7点

睡り人形  木々高太郎
医学を縦糸、異常××を横糸に、奇譚中の奇譚が織りなされる。 主人公の敬愛する “先生” は、妻を病で亡くし、意外にも早く再婚し、医大の要職を辞し、行方を晦ました。 落ちどころが、薄々どころか、かなりくっきりと見えつつも、この、控えめに意外な挿話を交えた結末の熱さには打たれる。  8点

秘密  平林初之輔
妻に挙動に疑いを持つ男は、自らも昔の恋人との再会に赴く。 不実のフの字が絡み合うあたりから展開する物語は、ある地点で唐突にその顔付きを変える。 全くもって予想外の人物の登場、その後の展開の歴史を見据えた機微。 半分ギャフン、半分怒涛、更に半分しみじみ(計算が合わない!)の結末は、なんとも珍重すべき後味。  6点

四次元の断面  甲賀三郎
ちきしょう、沁みるじゃねえか。 罪深い懸賞写真と、証拠不十分で放免になった男。 誤解と幻想が手に手を取って、狂気に迫る。  「だが、おれは悔やみはしないぞ」  最高に良い話と、最悪にクソファックシットな話とが天空の何処かで反射反響し合う。 ゆるやかで意地の悪い、道義的不穏を二つも抱えた反転には、麻◯◯◯スピリットをちょっとだけ感じなくもない。  7点

閉鎖を命ぜられた妖怪館  山本禾太郎
本業で窮地に立たされ、趣味に逃げた弁護士は、趣味に救われ、本業の落とし前を付ける。 デパートから墜落した女が通行人の男を圧死させた事故または事件。 入り組んだようで意外とひねりのない真相が、独特の楽しい語り口で洒脱に明かされた。  6点

陰獣  江戸川乱歩
乱歩さん、これですよ 。。。。 川面に浮かんだ実業家 “小山田” の屍体。 彼の妻 “静子” は、昔の恋人から脅迫を受けていた。 恋人とは、今を時めく猟奇探偵作家 “大江春泥”(本名:平田一郎)。 彼のライヴァルで理知的探偵作家の私 “寒川” は “静子” にせがまれ、出版社の友人 “本田” の力を借り、 彼女の身辺警護に当たる。 その矢先の “小山田” 殺害(?)事件だった。 いやいやいや、そんな単純な筋書きの物語じゃあありませんや。 数十年ぶりに再読しましたが、そこかしこの会話、フレーズ、シーン、ストーリー展開を意外なほどはっきりと記憶しておりました。 それだけ印象深かったのでしょう。 一方、初読時は思いも至らなかった後期××問題めいた要素にガツンとやられました(当時はそんな言葉もなかったと思いますが)。 伏兵のような “記憶の中の物証” がガラガラと、真相を取り巻く壁を崩しに掛かるあたり、最高にスリリングですね。 最後は、数段階に渉ってようやく開示される、結末の底なし沼。 まさか、あの人物が実は ・・・ なんて、初読時には頭をかすりもしなかった妄想さえ膨らみました。  9点

解説・「新青年」こぼれ話  中島河太郎
貴重な歴史証言を、簡潔に活き活きと詳細に渉って披露してくださいました。 どうもありがとうございます。

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