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ミステリの祭典

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スターバト・マーテル

作家 篠田節子
出版日2010年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 猫サーカス
(2026/04/06 17:17登録)
表題作は、乳がんと診断されて早期治療を受けた主人公の彩子が、死と向き合ってしまった疲労感のようなものを抱くところから始まる。明るくて励ましてくれる友人も真面目な夫も、煩わしい存在でしかない。そんな時に、彩子は突然かつてほのかな思いを寄せた光洋と再会する。何度か会ううちに光洋は彩子と夫を自宅に招き、二人をもてなす。彩子はそこで衝撃的な事実を知る。「スターバト・マーテル」の旋律は、物語の最初に重要な伏線として描かれている。聖母に象徴された哀しみは、通奏低音のように重く覆っているのだが、それは子供を持たない彩子の心境とも、微妙に響き合う。ここに至っても、まだ恋愛を扱っただけの作品かと思っていると、舞台を一気に広げ、ハイテク企業やイスラエル、ユダヤロビーなどを絡みあわせる。生を燃やし尽くそうとする主人公たちが、カタストロフィーへなだれ込むラストは圧巻。もう一つの中編「エメラルドアイランド」は、登場人物たちがリゾート地で思わぬ災難に遭って右往左往する物語。どこか憎めない人物たちを、軽めのタッチで描き出す巧みさはさすが。

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