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ミステリの祭典

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ラクロワ姉妹
シムノン ロマン・デュール選集

作家 ジョルジュ・シムノン
出版日2026年01月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 8点 クリスティ再読
(2026/09/27 11:15登録)
うんこれ面白い。当初は重苦しい家庭悲劇だと思って読むんだ。しかし、ある決定的な事件があって、凍り付いていた人間関係が崩れて、てんでバラバラの方向に走り出してしまう。その中で沈殿していた家族間の「憎悪」さえも相対化されて、喜劇的なものに変貌してしまう。いや、凄いよ。「ホラーに限りなく近い強烈な心理サスペンス小説」という瀬名氏の読みは、意図的なミスリードみたいな気がするな。

確かにシムノンってカトリックの信仰について真摯なところもあるんだけど、本作での信仰心篤い神秘主義に傾倒する17歳の少女ジュヌヴィエーヴだと、その信仰の根底に「歪んだ家族への抗議」があり、その結果としての殉教みたいな復讐という倒錯的な状況になるあたり、宗教さえも相対化するリアルな視線も感じつつ、その矛盾を「面白がっている」ようにも感じるんだ。だから単純な信仰でもない。この少女の死には、ゲーテの「親和力」を連想させるところがあるな。

いや、結構この小説の人間関係、「親和力」かもしれないよ。神秘主義傾向の強いヴェルヌの血統と、フランス的なプチブルなラクロワ家。この血統の掛け合わせで産まれたジャック・ジュヌヴィエーヴ・ソフィーのイトコたち。そのラクロワの血の配合の実験みたいな小説かもしれないよ。そしてあたかも芝居のバックステージをさらけだすかのような事件後の「ラクロワ姉妹」の姿は、その「ラクロワの血」を純化しパロディに仕立てたようなものでもある。晩年の「猫」に近い部分もあるなあ。

そうみると本作の完成感はハンパないのかもしれない。

No.1 6点 空
(2026/04/07 09:43登録)
シムノンの中でも多少短めにもかかわらず、大きく3部に分れているのが珍しい作品です、各部は3章ずつで構成されています。タイトルの姉妹他何人もの登場人物の視点を細かく切り替えていく手法も、珍しいでしょう。
「あたかもいびつなホラー、あるいは箍の外れた凄まじいサスペンス小説と向かい合ったかのような読後感をもたらす」と、巻末解説で瀬名秀明氏は書いています。「あたかも…」ならば、実は本作はホラーでもサスペンスでもないのかというと、言葉の定義にはよるでしょうが、確かにどちらとも言いにくいのです。
ミステリ的な要素がないわけではありません。毒殺未遂はありますし、毒薬分析も行われます。第2部第2章で起こる出来事も犯罪とは言えませんがミステリ的。さらに一種の館ものと見ることもできます。瀬名氏も、真の主人公は「〝家″そのものだといえるだろう」としています。でもねえ…

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