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ミステリの祭典

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キツネ狩り

作家 寺嶌曜
出版日2023年03月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 パメル
(2026/01/08 09:13登録)
バイクの事故で婚約者を亡くし、同乗していた自身も右眼を失明するという重傷を負った女性警察官の尾崎冴子が主人公。その尾崎が、かつての事故現場を訪れたところ、フラッシュバックのような現象に襲われ、自己の再現映像を目にする。彼女と弓削拓海警部補と、深澤航軌警視正の三人は、継続捜査支援室というチームを結成し、この能力を活用した捜査を始める。
深澤は尾崎に未解決の一家四人惨殺事件の再捜査への協力を要請する。尾崎の能力は親友の担当医を含めた4人だけの秘密なので、尾崎がつかんだ情報に添うように搦め手を使いながら捜査を誘導していく工夫が読みどころ。
尾崎の能力には、見えるだけで過去に干渉できない、証拠として法的に扱えない、使用には肉体的・精神的負担が伴うという強い制約が設けられており、この制約により主人公たちは能力で得た現実の警察手続きに、どう落とし込むかという知恵比べを強いられる。これが設定の荒唐無稽さを抑制し、独特のもどかしさと緊張感を生み出す最大の魅力となっている。
傷を追いながら強く立ち向かう尾崎、元上司の弓削、策士の深澤、そして犯人の不気味さと人物造形が素晴らしい。作者はグラフィックデザイナーという経歴もあり、文章は映像的なので特殊能力をもう少し活用して手直しすれば、ドラマや映画化しても面白いと感じた。

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