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ミステリの祭典

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作家 小田雅久仁
出版日2023年07月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 びーじぇー
(2026/04/18 20:39登録)
冒頭の「食書」は本を食べる話。ページを破いて口にすることで、主人公は小説世界に転生する。一度その感覚を味わうと、もはや現実に甘んじてはいられない。「耳もぐり」は指先を他人の耳の穴に突っ込むことでその人に潜り込む技を得る話。「喪色記」は他人の視線が気になるサラリーマンが上司のパワハラによって精神を病み、休職しているうちに予想もつかない展開となり、壮大な宇宙的神話とも言うべき結末に至る。「柔らかなところへ帰る」は路線バスで豊満な肉体を誇る女と同席した男が、それまで自覚していなかった欲望に目覚める。個人的な夢想に留まるのではなく、男を取り巻く現実が呼応してゆく。「農場」は畑で人の鼻を育てている話で、本書の中でも群を抜いて異様な話。「髪禍」は毛髪を崇める教団の話。「裸婦と裸夫」はハチャメチャな光景が展開する。

No.1 6点 糸色女少
(2026/01/05 20:11登録)
肉体にまつわる7編からなる作品集で、どの作品も身体の奥から突き上げてくるような怖さに満ちている。
どれも現実と地続きのままに、現実とは紙一重の異世界に入り込んでいく。その様は眩暈さえももたらす。加えて肉体をテーマにしていることの肌感が怖さに拍車を掛ける。とはいえ、怖いだけではない。迷い込んだ異世界には新たな世界の兆しのようなものもほのかに見える。本作は、単なる物語ではなく、物語による曼荼羅なのだ。その濃密さに圧倒される。

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