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ミステリの祭典

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この子の七つのお祝いに

作家 斎藤澪
出版日1981年05月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 クリスティ再読
(2025/10/20 22:24登録)
第一回横溝正史ミステリ大賞受賞作(1981)。翌1982年に角川春樹制作で映画化。

選評でもとにかく筆力があることが、受賞の決め手になっているね。ベタな女性の復讐譚なんだけども、政界の大物の内妻とされる、驚異の手相占い師「青蛾」の謎、戦後直後の混乱期の引揚者の苦難など、キャッチーな要素をうまく組み合わせて構成されている。キャラも前半で事件を追及するルポライター母田とバーのママとのロマンスが良く描けていて、人物の輪郭を印象的に見せる筆力が確か。選評でもミステリ的な「傷」が指摘されるわけだけど、まあそれは(苦笑)。謎は大したことはなくても、サスペンスがキッチリ持続していて弛まない。典型的なイヤミス、というかイヤミスのハシリみたいな作品。映像向けな美点はいろいろあり、映像化含みのコンペとして納得の受賞作というべきだろう。

ついでだから映画も再見。監督は大ベテラン増村保造で本作が遺作になる。日本映画らしいローアングルを多用した丁寧な絵作りが印象的。ストーリーは適当に端折りつつほぼ忠実に展開し、クライマックスだけ対決を盛っている。まあ犯人当て、というようなものでもないから、役者の格で犯人って決まるものだ(苦笑)岩下志麻はクール美女。現代作品でもほぼ全編着物姿でこれがまた似合う。長襦袢でのラブシーンが素敵。でも復讐に人生賭けちゃう女性のドロドロ怨念とは相性がいいとは思えないなあ。逆に「実は真犯人」な岸田今日子の怪演技が有名。評者は杉浦直樹の演技って昔から嫌い。ヘンな力の入り方があって、どうも受け付けない。
トラウマという声があるくらいにホラーでかつ、派手に血ドバドバなスプラッター。凶器となるカンナ棒が見た目禍々しいのがいい。まあ普通に商業的に撮ったサスペンス映画だな。凡作だけど、併映作の「蒲田行進曲」が当たった分、見た人が多い作品。
(あと御年40歳越えの志麻アネゴのセーラー服姿が、観客にショックを与えた有名な話がある。スチル写真だけどね。志麻アネゴ気の毒)

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