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ミステリの祭典

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たまごの旅人

作家 近藤史恵
出版日2021年07月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 ことは
(2025/10/19 16:14登録)
単行本の帯に「日常の謎」とデカデカと書いていますが、これはほとんど詐欺です。なんの謎もない、普通小説です。いや、それは「この人はこんなことを考えていたんだ」といったところはあるけど、謎としてフォーカスは全然していないので、これを「日常の謎」としたら、すべての小説が「日常の謎」になってしまいます。
ということで、ミステリではないですが、読みやすさは、安定の近藤印。新人旅行添乗員を語り手にして、旅行記と人情噺をうまくミックスし、するすると読ませる。
旅行記の部分としては、アイスランド、スロベニア、バリ、西安と北京ととりあげて、ツアーで周る観光地を描写していく。人情噺の部分としては、「憧れていた添乗員」、「父と確執がある女性」、「ひとり息子の相手を気にする女性」、「嫌いな国に来た男性」といった人をとりあげる。最終話だけは構成が変わって、舞台は沖縄で、観光地は巡らず、人情噺の部分は、語り手自身となる。
見たことのある素材を熟練の技で料理して、最後には「いい話を読んだ」と感じさせる。
「孤独のグルメ」のゴローさんのように、「そうそう、こういうのでいいんだよ」と言いたくなる読み心地。うまいなぁ。

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