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ミステリの祭典

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囚われのイヴ
復顔彫刻家イヴ・ダンカン

作家 アイリス・ジョハンセン
出版日2019年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 クリスティ再読
(2025/10/04 16:22登録)
久々にロマサス。復顔彫刻家イヴ・ダンカンのシリーズ。2013年の新三部作の一つ目で、NYT全米ベストセラー1位ゲット。全体が総ページ数1500ページくらいになる超大作になるんだが、一話目の本書では、話が続いていくから、ちゃんとした結末ではなくていわゆる「クリフハンガー」。

評者は翻訳済分では前々作になる「パンドラの眠り」は読んでるから、大体の人間関係は把握済み...のつもりがねえ、ヒロインのイヴ・ダンカン、メインヒーローの誠実派のクイン刑事、養女で画家になったジェーン、誘拐されて殺されたけど霊的な守護をイヴに与え続けている娘ボニーという辺りはともかくも、養女ジェーンを巡って鞘当てるチョイ悪系の「危険な香り」の謎の男ケイレブと、美形のトレヴァー、CIA捜査官でイヴに惚れているベナブル、それから犬の訓練士サラ・ローガンやら何やら、要するにこのシリーズ、間の作品に登場したキャラが再登場するのと、過去の大量のスピンオフで活躍したキャラが、さらに本線に再登場する。それでもキャラ説明が懇切丁寧なために、新規客が「誰だこれ!」にならずに参入障壁が低い。MCUとかDCとかに通じるアメリカンなエンタメのスタイルじゃないのかな。

復顔彫刻家イヴの元に、養女のジェーンが帰省する予定。しかし、パートナーのクイン刑事は証言のために出張、ジェーンは愛犬が重態に陥ったために、信頼する獣医の元へ駈け込んで遅れるとの連絡。しかし、犬の病気は何者かに毒注射をされたのが原因であり、獣医の島でジェーンは狙撃される。クイン刑事はその島へ飛び、イヴもその島へ駆けつける準備をしたその時、イヴは誘拐された...すべてはイヴを一人にする策略。妄執に囚われた危険な男が、その崇拝する邪悪な息子の顔を、頭蓋骨から復顔することをイヴに強制する。このイヴのピンチにイヴの周囲の人々は結束してイヴの救出に向かう....

まあこんな話。イヴとジェーンが二人ヒロインで、周囲の男たちがメロメロ。イヴは特に「女王蜂」って呼ばれて、意外なくらいに日本ではウケが悪いようだ(苦笑)まあこの人、サスペンス・ホラー色は強いけど、官能色は薄いからね。普通にサスペンス。でも、結構スピリチュアルなカラーは強め。これも日本人ウケが悪いかな。もちろんキャラの書き分けなんぞ達者なものだし、キャラの心理描写もたっぷり入っていても、重苦しくならないくらいに節度がある。

ジェーンが死んでしまうのではないかと思ったとき、怒りだけではなくもっと深い、不思議な感情が沸き上がって来た。ケイレブは深く考えないことにした。これまで経験したことのない危険な感情だと本能的に悟ったからだ。とりあえず怒りと所有欲だけを意識することにした。怒りと所有欲だけならば、なんとか対処できる。

となんとまあ、懇切丁寧でわかりやすく、しかし溺れないキャラ描写を兼ねた心理描写なことだ。こういう悪達者さが嫌でなければ、エンタメとしては充分。

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