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ミステリの祭典

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ぬるくゆるやかに流れる黒い川

作家 櫛木理宇
出版日2019年06月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 パメル
(2025/09/15 19:10登録)
栗山香那と進藤小雪は、中学生の時に家族を無差別殺人により惨殺された。犯人の武内譲が拘置所で自殺したため、犯行動機は不明のままとなってしまった。納得のいかない小雪は香那を誘い、「鑓戸二家族殺人事件」と呼ばれるこの事件を調べることとなった。
事件の背景には「からゆきさん」(海外へ売られた娼婦)の悲劇から続く、武内家の女性蔑視の歴史が横たわっている。特に武内チヤの手紙や彼女たちの悲惨な運命は、歴史的事実に基づく理不尽さを強調し、現代のジェンダー問題にも通じる重さを感じさせる。
無差別殺人事件というテーマを扱いながら、被害者遺族の心の葛藤や事件の背景にある社会問題を丁寧に描き出している。香那と小雪は家族を失ったトラウマを抱えながらも、事件の真相を追う過程で「正しい怒り」を見出し、信頼関係を築き、最終章で二人が前を向いて進む姿は、深い余韻が残った。

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