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ミステリの祭典

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不確かな真実

作家 和亭正彦
出版日2025年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2025/09/13 21:56登録)
(ネタバレなし)
 その年の1月6日。都内の西城公園駅周辺の高級マンションの4階で、国際的に有名な50歳代の服飾デザイナー・国枝和子が惨殺された。死体の損壊ぶりを含めてかなり猟奇的な殺人事件に際し、警視庁と所轄の西城署の合同捜査本部の刑事たちは犯人検挙に躍起になる。やがて防犯用カメラの記録映像から、数名の不審な人物が捜査線上に浮かんでくるが……。
 
 今年の新刊で、Amazonほかで話題なようなので読んでみた。
 佐野洋か笹沢佐保あたりの平均作レベルといったリーダビリティの高さでサクサク読める警察小説で、前半、数名の容疑者が絞り込まれていくあたりまではなかなか快調。
(ただしリアリティを醸し出したいのか、役職のある捜査陣たちの固有名詞をやたらと登場させすぎるきらいはあるが。)

 良い意味で昭和の一流半の警察捜査ミステリの再現といった趣で(作者が自覚的にそういう作風を狙ってるかどうかは知らないが)、評者のようなオッサンには、なかなか懐かしいレトロな感じでけっこう心地よい。

 で、中盤でミステリとしての方向が大きく転換・展開し、ああ、そういう作品なのね……という感じになる。
 まあそれはそれでいいのだが、後半のその中身に関してはありきたり、ととるか、良くも悪くも2020年代によくこんなネタで勝負に出たな、と感心するか、そのどっちか。個人的には4対6で、後者寄りの感触かな。

 とにかく現在、私的に多忙で長編ミステリがなかなか読めないので(涙)、3時間程度で読み終えられて、それが何より良かった(笑・中泣)。

 他愛ない作品と、とる人もそれなりにいるんじゃないか? とも思う。
 が、個人的には、先述のどっかレトロチックな小説の雰囲気も含めて、そこそこ好感を抱ける一冊。 

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