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ミステリの祭典

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宿命は待つことができる

作家 天城一
出版日2006年08月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 nukkam
(2017/05/31 15:15登録)
(ネタバレなしです) 作者の自作解説によると第2長編である本書は「エラリー・クイーンのスタイルで」1947年頃に書き上げられ、作家仲間から「小説の下手なのに寒心した」と批判されたそうです。そこから改訂を重ねて1990年に私家版(当時は「Destiny Can Wait」という英字のタイトル)で出版されたのは実に第6稿です。その私家版の解説によれば作者は「悪の社会の階層性」を描こうとしていたようで、悪の存在とその悪を上回る悪の存在、悪事の連鎖による悲劇性と虚無感の描写の前には本格派推理小説としての謎解きは(探偵役の島崎が一部の謎解きしか貢献できず自白頼りなこともあって)印象薄に感じられてしまいます。ただ感情描写にかなり力を入れていることもあって個人的には3作の長編の中では1番読み易かったです(あくまでも天城作品の中ではという意味で、一般的には本書も難解な作品だと思いますが)。

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