NERVOUS BREAKDOWN 漫画 |
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作家 | たがみよしひさ |
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出版日 | 1997年04月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 7点 | クリスティ再読 | |
(2025/08/26 15:14登録) 山田玲司×きたがわ翔のYouTubeで「たがみよしひさ革命」という対談動画が上がっているように、1980年代初頭たがみよしひさの「新しさ」というのは本当に鮮烈だった。このくらい技術的革新があった漫画はない、と言われるくらいのもの。ラブコメは得意じゃない筆者でさえ熱狂したよ。「軽井沢シンドローム」が代表作にはなるわけだが、たがみの最長連載となるのがガチのミステリ漫画シリーズである本作。 「円と面」「心配、女探偵!」「「まじん亭」夫人は死んだ」「ほねおしみの埋葬」「木杖行最終バス」とかね、サブタイトルがすべてミステリ名作(それもかなり、渋い)のパロディタイトルになっていたりする。たとえば「入学」という作品だと、密室殺人の形状記憶合金のトリックが出てきてさらにそれを「見せトリック」として否定するとかね、元ネタをひねった、かなり凝った仕掛けが随所で見られる。 頭の切れが抜群の安堂一意(ただし肉体的に虚弱で、すぐにゲロを吐く)と筋肉バカで頑丈極まりない三輪青午を中心とする探偵事務所が舞台。何と言っても安堂がかっちりとしたロジック派で、ロジック中心の推理をキメてみせる。さらには三輪が主体となる話では、肉体的なアクションをベースして、傭兵と渡り合うなどの冒険小説的な展開も十分。作者のミステリへのなかなかの造詣が窺われる。 さらにたがみよしひさといえば、80年代のカルさを体現したマンガ家でもあり、ラブコメの恋愛観を「コミュニケーションとしてのSEX」としてひっくり返して見せた作家でもある。殺人の動機も愛情の縺れが定番としてある中で、上出来なドラマをリアルな恋愛劇の中で構築して見せるのは、「軽シン」でも保証済みの手腕である。 たがみよしひさの代名詞は、三頭身ギャグキャラと八頭身シリアスがコマごとに切り替わる手法。本シリーズは三頭身主体。慣れないとキャラの区別が難しいかな。それでもシリアスキャラではたがみ本来の画力が楽しめるし、三頭身デフォルメでもセンスの良さはさすがなものでもある。 本作13巻もあるから、今まで懸案だったんだ。夏風邪ひいたので電子書籍を購入して、やっとできてうれしい。本サイトの趣旨ならば、「化石の記憶」もやりたいな。 |