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ミステリの祭典

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一ノ瀬ユウナが浮いている

作家 乙一
出版日2021年11月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 sophia
(2025/12/17 17:24登録)
姉妹作「サマーゴースト」は「再生」がテーマだったと思いますが、本作は「別れ」がテーマになっています。「サマーゴースト」とは異なり、ユウナを認識することが出来るのは主人公一人だけですし、死亡した過程に謎が存在する訳でもありませんので、シンプルに主人公とユウナの物語だけが描かれています。否が応でもアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」を思い出すストーリーですが、もう生産されていない特定の線香花火に火を点けたときにだけ姿を現すという残り回数制であるのが「あの花」(略しました)とは決定的に違うところであり、いずれ必ず訪れる別れを思わせて切ない気持ちにしてくれる要素であります。何度か繰り返される「俺たちは終わっている」という言葉も主人公の覚悟を表していますし、最後の奇跡の一回における真実の別れが胸を締め付けます。結果としては「サマーゴースト」と同等かあるいはそれ以上の作品であったと思います。

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